内容説明
「日本古典文学の愛の伝道師」を自認する研究者が、検定教科書とそれにもとづく国語教育がはらむ問題点を鋭く分析。高校の教科書で人気の教材を、最新の研究結果をふまえた新たな視点から読み直し、「性」や「宗教」など、検定教科書にはぜったいに収録されないテーマの作品を「教材」として取り上げる。学校教育の古文に苦しんだうっぷんを晴らし、古典文学の新たな魅力を発見できる新しい「教科書」。
目次
第1部 教科書を読み直す(児のそら寝―『宇治拾遺物語』から;雪のいと高う降りたるを―『枕草子』から;芥川―『伊勢物語』から ほか)
第2部 教科書には載らない古文を読む(食べたい・食べたい・もっと食べたい―正岡子規『仰臥漫録』から;今月今夜のこの月を―尾崎紅葉『金色夜叉』から;泣き上戸―式亭三馬『酩酊気質』から ほか)
第3部 論説編―国語教科書の古文、ここがヘン!(古文嫌いはなぜ多い;古文って「トリビア」?;「教室の権力」としての教科書 ほか)
著者等紹介
田中貴子[タナカタカコ]
1960年、京都府生まれ。奈良女子大学文学部卒業、広島大学大学院文学研究科修了。文学博士(日本文学)。甲南大学教授。『あやかし考』(平凡社)でサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ステビア
17
明治期のものから段々古いものへ遡っていく構成がよかった。文科省批判もある。2020/12/16
書庫の番人
4
著者のアクが強いけど、意見がしっかりしていて考えさせられる所もあった。第1、2部は古典を読むところだから楽しめると思う(*´ω`*)第3部は論説だから難しいけど、国がいかにどの方角に導くかで、私達の意識はある程度決められるかって感じかな。2015/10/16
良さん
4
学習指導要領改訂に伴って伝統文化に関する事項が設けられ、古典教育には「追い風」といわれる。しかしながら、文科省の考えている古典教育と、現場や大学教師、つまり国文学者の考える古典文学教育のズレがあり、その部分を論じている。教師自身が、古典とは何か、何を子どもたちに伝えるのか、真剣に考えなければならない。2012/02/12
ラグエル
4
清少納言の性格のイメージが悪くなっているという話に興味。少納言の性格がどんな性格か話し合ってみよう、などという問題提起は、果たして教育的なんだろうか。それも、本文の解釈がいろいろある中での。古典の先生に聞くと「少納言はこういう性格だったから、結局中宮定子は嫌われて、彰子に寵愛則ち道長の権力独占と動いた」ってとても明快に(短絡的に、ともいう)語ってくれたけど。著者のいうサロンの雰囲気を書き留めておいた感じという解釈が好きだな、僕的には。2011/07/11
ろくしたん
2
表紙が古文の教科書っぽく、何とも手に取りづらい。内容は、教科書的古文から、正岡子規のものまで。古文を読むというよりは内容紹介。研究者だけあって、面白どころは押さえている。多少ニッチすぎるきらいあり。2020/11/18