内容説明
源氏物語に先行する壮大な長編物語。ある貴族の四代にわたる秘琴の伝授を主題とし、源氏・藤原氏両家の皇位継承をめぐる対立を絡めて語られる。異国の不思議な体験や琴の伝授にかかわる奇瑞などの浪漫的要素と、皇位継承や結婚に関する世俗的な話題を併せ持つ。絶世の美女への求婚譚、三奇人のエピソードも登場し、波瀾万丈の展開が楽しめる。膨大なため全体像がみえにくかった作品を初めてわかりやすく説いた古典入門書。
目次
俊蔭
藤原の君
嵯峨の院
春日詣
吹上・上
祭の使
吹上・下
菊の宴
あて宮
内侍のかみ
沖つ白波
蔵開・上
蔵開・中
蔵開・下
国譲・上
国譲・中
国譲・下
楼の上・上
楼の上・下
著者等紹介
室城秀之[ムロキヒデユキ]
白百合女子大学教授。1954年生まれ。東京大学卒・同大学院博士課程単位取得。博士(文学)。専門は物語文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
51
発生が比較的古いのに、いろいろな要素が含まれていて、後発の作品との比較が面白くなりそう。2016/04/05
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
45
〈日本の古典を読む第三回〉のイベントより。「うつほ物語」ずっと読みたかった古典です♪日本最古の長編物語なので作者未詳。現代口語訳も少ない。本書にも全てが書かれてないのが惜しい。読んでいると「源氏物語」に似ている部分が多い。構成的には付け足しり、後で思いついたのかもしれません。[あて宮の求婚譚]は必要? [琴の物語]で読むととてもファンタジックで面白かった♪2017/03/09
しゅてふぁん
31
清少納言や紫式部も読んだという『うつほ物語』。一言で言うと、秘琴伝授の話。こんなに面白いとは思わなかった!ただ、登場人物が多すぎてややこしい。長編の物語では時間の経過とともに登場人物の役職がどんどん変わっていくので誰が誰だかわからなくなっていくから大変。親兄弟は名前も似てるし…。もっと詳しい内容を知りたい、涼・仲忠優劣論に加われるくらい読み込んでみたいと思って、図書館で全集(全3冊!)を手に取ってみたけれど、あまりの重さにすぐに棚に戻してしまった。でも、近いうちに読む!!2017/03/16
しぃ
27
日本最古の長編物語。紫式部や清少納言も読んだという物語です。解説によるとどうにも話が噛み合わずに無理やり長編にしたような形跡もあるようですが、とても面白かったです。似たような名前が多く、主人公が代替わりしていくのでややこしい部分はあります。秘琴伝授なんて、今見ても魅力的な言葉。途中求婚話になって戸惑いますが、最後はまたいいシーンでした。2018/08/05
かふ
20
『源氏物語』にも出てきて影響を与えたのではないかというので読んでみる。最初の長編物語で、あて宮の婿選び争奪戦は、『竹取物語』にもあるけど、面白い。仲忠と涼のライバル関係や政治(藤原氏の摂関政治)の話は確かに『源氏物語』を先取りしていると思う。あて宮が「藤壺」なのも影響があるのかもしれない。その前に秘伝の琴を伝授する奇譚は澁澤龍彦『高丘親王航海記』のような遣唐使船が遭難してハシ国(解説によるとペルシア説があるそうで)にたどり着いてからの旅行記風でそれは『源氏物語』にはない話で面白かった。2024/03/15