内容説明
【第68回毎日出版文化賞特別賞受賞作】国王ルイ16世を断頭台に送り込み、共和政の道を歩み始めたフランス。しかし不況はとどまるところを知らず、対外戦争ではフランス包囲網が敷かれ戦況は暗転、国内ではヴァンデ県を発端に内乱が拡大する。国内外の脅威に無為無策ながら、政権を手放さないジロンド派がマラを告発したことで、マラを信奉するサン・キュロットら庶民の怒りが膨れ上がり――。民意が革命を暴走させる、第13巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
41
王が処刑され、共和制への移行が速度を速めて進行します。私はこの中では議会でのやり取りというものが結構面白く、ロベスピエール、ダントン、マラなどの演説などでのやり取りが目に浮かぶようです。小説仕立てというのが楽しくなります。この巻の解説は東えりかさんというのも楽しく参考になりました。2014/12/26
Book & Travel
28
国王の処刑後も暮らしは良くならず、庶民たちの暴走はエスカレート。その庶民を代表して、サン・キュロットのエベールの視点が新たに加わる。エベールの語りは下ネタばかりで下品で暴力的だが、初めて政治的な力を持った庶民のエネルギーも感じられる。一方情勢が苦しいジロンド派は、影で取り仕切るロラン夫人の視点が頻繁に。立場も語り口も対照的なエベールの視点との対比が面白く、上手い書き方だなと思う。庶民の人望を集めるマラ、ロベスピエールに対し、ダントンやデムーランは少し不穏な雰囲気が。これはこの先の布石なのかも知れない。2024/11/06
Y2K☮
18
自由経済主義を押し進めるジロンド派。戦況悪化もあって物価が高騰し、激怒した貧民層は某作家の小説よりも切実に暴虐に「パン屋を襲う」。富の再分配の為に所有権の制限を憲法に盛り込もうとするロベスピエールはやはり庶民の味方。ただ彼も国王の処刑を主張したひとり。実は壊れかけてるのか? パン屋襲撃を煽ったマラへの裁判は尤もらしい嘘が飛び交うだけの茶番劇。飄々と切り抜ける姿に憧れるエベール、そして彼の書く下品極まりない記事に狂喜する人々。違和感。庶民の為の政治はいい。でも庶民が暴力と威圧で議会を意のままに操るのは違う。2015/03/03
イトノコ
14
再読。サブタイトルに相応しく、彼らの代弁者たるエベールが語り手として登場(実はシャンドゥマルスの虐殺でチラッと出てきていた)。彼の「くそったれ調」や民衆の野次はわざと露悪的に書かれていると思うが、貧すれば貪すってこういうことかと…。どちらかと言うとロラン夫人らジロンド派に肩入れしてしまうなぁ。また、エベールとともに俄かに脚光を浴びるのがマラ。彼は一人称とはならないため、またそのキャラ付けからも、何を考え何を目指していたのかがわからない。初読時は、後のロベスピエール派の恐怖政治の下地を作った印象だったが…。2019/09/24
飛鳥栄司@がんサバイバー
12
革命なんてカッコイイことじゃなくて、サン・キュロットたちは、食料とマラのような拠り所をもとめているんだよ。なんの苦労もなく、いいもの着て、いいもの食っているブルジョア、もといジロンド派は、国民の塗炭なんてわかりはしないな。ロラン夫人は不倫まで楽しんじゃってる始末。マラを逮捕して起死回生を狙ったものの、どえらい失敗をしてしまったジロンド派は自分たちで己の首を締めていくんだろうな。恐怖政治の足がかりを作った彼らの罪は深く、あまりにも愚かでしかない。中盤存在感が薄かったロベスピエールに光が当たり始める予感。2022/05/21
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