内容説明
稲目以来、馬子、蝦夷、入鹿と大臣の地位を伝え、御世に権勢をふるう蘇我の嫡流。大臣入鹿の山背大兄王殺害を機に、蘇我の動きを危ぶむ中臣鎌子は、中大兄皇子との連繋を図る。国を憂え、打倒蘇我で結ばれた藤原氏の祖・鎌足公と若き日の天智天皇の欅の大樹の下の出合い──「川はある。水はある。山はある。緑はある。しかしまだこの国に、たった一つ国はない」。かくして六四五年六月の十二日、蘇我入鹿は、刃に斃れる。
目次
父子一系
鼠
大連
逆転
擁立
弑殺
女帝
蝦夷深玄
飛鳥川
帷帳
布置
大欅
蒼天
憂国
蘇我滅亡
雨
譲位
錯誤
鹹海淡海
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
67
大化の改新の前後が描かれます。大臣の地位を独占し、権力を振るう蘇我氏。それに反し、中臣鎌子は中大兄皇子と国の憂いをはかっていたようです。ただ、己の利のために行動し、血が流れたと言っていいでしょう。2019/05/18
のんき
8
上宮王家滅亡から近江遷都まで。といっても単純にこの時代を記述するのではなくて、あくまで平家物語という枠組みに必要な事象が取捨選択されていて、なにが詳述されなにがすっ飛ばされるかをみるのもなかなか面白い。2010/02/23
小鈴
6
「よいことは、どこにもなかった」で終わる。この巻も面白かった。だが、蘇我氏というとどうしても山岸涼子のマンガのキャラが浮かんじゃって(笑)。馬子とかエミシとか。馬子は不細工おじさんで、もちろんエミシは美男子ですよ! 2010/06/24
筋書屋虫六
6
飛鳥の時代にあって、厩戸皇子についてはほとんど語られないというのが、「日出ずる処の天子」世代の自分としては、え、そうなんですか?でありましたが、これは帝とそれを擁立する(たてる)勢力の物語で、そうなると物語の流れは蘇我氏を追うことになるんですね。帝の条件は「筋目が正しく、己を空しくする」ことが肝要だと蘇我の長・馬子は断じます。後半は「国とはなにか?」をはじめて問い、我が朝には「国」の体がないことを覚えて革命をおこした中大兄皇子と鎌足公の物語。二人が夏の河原で問答する場面がすがすがしい緊張感に満ちていました2009/11/15
まりこ
4
1巻の方が格調高い感じで面白かった。2巻は読みやすくなり、絡み合ってややこしい血縁関係も分りやすくなっていた。人物像は以前読んだ黒岩重吾の本の方がしっくりきたような気がするが、色んな描き方があって面白かった。 2018/06/25