内容説明
役人の腐敗がきざし始めた明治2年、ひそかに輸入されたフランス製ギロチンが小伝馬町の斬罪状に据えられた……。太政官弾正台(役人の汚職を調べ糾弾する役所)の大巡察官、香月経四郎と川路利良がフランス人美女エスメラルダの力を借りて次々とおこる謎の事件を解明していく。明治開花期の時代相に維新政府の裏面を背景にした探偵小説の魅力と、緻密なトリックを多用した本格推理の醍醐味とを併せ持つ風太郎ミステリの傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けやき
39
【再読】小笠原壱岐守長行のアメリカ亡命や岩倉具視の養女づくりなど取り上げられてる事件が渋くて好き。「正義の政府はあり得るか」という香月経四郎の想いの余韻の残る物語でした。2024/06/24
星落秋風五丈原
37
メインはミステリだが、もう一つの大きなテーマは、変わり行く警察機構。 川路が西郷と大久保を例に挙げる。 「西郷の人物は第一級、じかに知る者はその魅力に心酔するが、人間生涯じかに接触するのは多くても千の単位。大久保は組織力というものを持っている。組織力はじかに知らない者をも動かす。そちらの方が恐ろしい。」 この西郷に代表されるのが『鬼平犯科帳』や、『警視庁草紙』でも茶々を入れられる半七ら江戸時代の警察機構で、大久保を代表するのが近代の警察機構。そして川路は言うまでもなく後者の継承者。2003/09/10
ヒダン
24
今年の一冊会本。制度を記述するところから始めたり、ちょい役で多くの歴史上の人物お登場させたり時代物を意識しているが、本格推理小説というのが真の姿。役人を取り締まる弾正台という役人の二人が明治になったばかりの物騒な東京で起こる事件に五人の邏卒を使い走って挑む。舞台を整える最初の章と収束の最後の章以外は短編のようにその章の中で事件が起こり解決される。それぞれのトリックは明治という時代を活かしており巧妙かつ入り組んでいる。そしてもちろん筋は通っているが収束は意外性があって驚いた。これは紛れもなく傑作。2015/12/24
とも
23
★★★★明治創生期の警察庁設立前、わずかな期間存在した弾正台。その期間で大巡察として活躍する香月経四朗と川路利良が事件を解決する8作の短編の連作短編集。前半は、テンポも悪くてどちらかというと読みずらい。が、ストーリーを通して読み切った時に、その理由がはっきりするとともに、時代考証と引きも切らない歴史的有名人登場に飽きはない。2019/11/03
usarlock
19
明治2年を舞台に大巡察の川路利良と香月経四郎が殺人事件を解決する連作短編集。解説で日下氏がこの作品をべた褒めしているが、なる程ね。不可能犯罪にバラバラ死体と一つ一つのトリックも面白いが、最後の展開がすごい。ただ読むのにかなり時間がかかってしまい、特にエスメラルダの台詞が全てカタカナなのがきつかった。作中には、事件を捜査する川路をはじめ歴史上の人物が多く登場するので歴史好きの方は楽しく読めそうです。2014/06/17