内容説明
大衆新聞「万朝報」社長、黒岩涙香は発行部数を伸ばすため、紙上で暗号解読による懸賞クイズを始めたが……。気の効いたアイデアで権力者の腐敗を告発しようと試みる表題作。李鴻章暗殺を謀った犯人を主人公に、漱石の文体を模写した『牢屋の坊ちゃん』。牛鍋屋チェーンのオーナー木村荘平が始めた火葬場の顧客第一号をめぐる人間模様『いろは大王の火葬場』。大逆事件の首謀者、幸徳秋水を異なる四つの角度から描いた『四分割秋水伝』。以上に作者自身の後口上を付した短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
99
この山田風太郎の作品集も12巻となりあと2巻を残すのみとなりました。この巻ではやはり表題作の「明治バベルの塔」が楽しく結構名前の知っている人物が出てきます。黒岩涙香と幸徳秋水が同じ「万朝報」という新聞社にいたということは知りませんでした。「牢屋の坊ちゃん」は夏目漱石の「坊っちゃん」のような書き方で李鴻章を狙撃した人物の回顧録のような感じです。「いろは大王の火葬場」「四分割秋水伝」も楽しめました。様々な人物をよく探しだして物語にしています。2025/08/03
月をみるもの
17
いままで風太郎作品を戦中日記しか読んだことがなかった、おのれの不明を恥じるしかない。。幸徳秋水が翻訳したクロポトキンの「パンの略取」( https://bit.ly/2Qxsdg2 ) と大杉栄の訳した「相互扶助論」を読まねば。。。2019/01/09
きょちょ
16
「牢屋の坊っちゃん」は、犯罪者版「坊っちゃん」。こちらの「坊っちゃん」も清々しい。「明治暗黒星」も面白いが、主人公2人とそこに絡まる2人の女性の心の葛藤も含めた生きざまを描いた長編にしてくれたらもっと素晴らしい作品になるのでは。「表題作」は、黒岩涙香と幸徳秋水が登場するちょっとした推理物。秋水が実に活き活きとしている。「四分割秋水伝」は、作者の試みは素晴らしいが、作者自身の後口上にあるように、「読むほうに面白いかどうか疑問」のとおり、読者としてはそれほどではなかった。しかし、その「慧眼」はさすが。★★★★2015/10/10
getsuki
13
山風先生の明治もの短編集。いろは大王の話はオチ的には予想通りだったけれど、ドタバタ劇が楽しくて笑いがこみ上げる。表題作の暗号も良かったなぁ。他の作品も明治を生きる人々が活き活きしていて楽しい読書時間でした。2017/01/08
スプリント
11
山田風太郎の明治時代小説にはまっています。夏目漱石の坊ちゃんの文体をまねた「牢屋の坊ちゃん」や牛鍋屋の木村荘平が奮闘する「いろは大王の火葬場」がコミカルで面白いです。2017/01/15