内容説明
出獄人保護の仕事を行う熱血漢、原胤昭は悪逆な巡査たちの謀略により獄囚の身になってしまう。一方、無私の魂を持った姉娘の死をさかいに、原に恨みを持つ犯罪者たちの心は大きく揺り動いていく。十字になった秘密の十手架を持つ原の運命は? 幼き日の一葉、漱石、子規らも姿を見せ、奇想天外の物語は意外なクライマックスを迎える。他に大津事件関係者の後日譚を描いた『明治かげろう俥』、ロンドンを舞台にした『黄色い下宿人』の二篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
21
悪鬼の如き看守・巡査と出獄人たちの「けだもの勝負」の下巻。それまで因果をじっくり描いていた反面、ラストが少し詰まり気味かな。一人一殺の残酷絵巻が筆乗っててひたすらに楽しい。十手=罪を捕らえる道具、十字架=罪を許すモチーフ、その二つが一つになる意味の重ねがうまいわ。『黄色い下宿人』はホームズ・パスティーシュにあの人を出して「明治小説」にするアイデアの大本。推理対決はミステリも書ける山風の面目躍如といった感じではあるが、これはホームズものとして許されるのか?が不安。2019/03/02
きょちょ
12
表題作ほか2作収録。お夕さんの死によって、悪党5人が巡査・看守を1人1殺。寺西とお町の闘いが一番面白い。それにしてもお夕さんは実に魅力的な女性だ。こんな人、実際の世の中に居るのだろうか。「明治かげろう俥」は1950年代の古い作品だが、表題作より面白く読めた。犯罪者の家族と、犯罪者を捕え褒賞金をもらった男たちのその後の人生を描いた哀しいお話。「黄色い下宿人」は、ホームズと夏目漱石の推理合戦、ドイルの文体に似せて描いている。風太郎明治小説全て読了。「警視庁草紙」「幻燈辻馬車」がやっぱり1番かな。★★★★2015/10/29
キムチ
9
けだもの勝負と銘打って五番まで続く。こうなると落語もしくは筆者の妖術シリーズの様相を呈し、面白くて仕方ない。聖女お夕が十字架を持って昇天するが、それでも史実にしっかりつま先を据えて、通庸、漱石、子規、一葉、吟香(筆者作品にはレギュラー、よほどお気に入りの様だ)が絡んで行く。 ヘボン、仕立て屋銀次、自由民権運動と福島事件の場面が活き活きと誌面で跳ねる。 会津藩、福島が明治時代苦しんだ時間がこのように語られるとおぼろげながら骨格が掴めた。2013/09/11
河内 タッキー
7
最後の10数行、娯楽小説でありながら泣ける。それまでの話は活劇だが、最後は全く色を変え、爽やかな感動を覚えた。2015/04/26
たみき
5
明治舞台の忍法帖を読めると思わなかったので新鮮だった。けど「明治かげろう俥」のほうが好きかな。2015/02/20
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