邦題は『ウーマンウォッチング』。同じ著者にManwatchingという本があって(邦題は『マンウォッチング』)、その翻訳を意識しての意訳だろう。 原題を直訳すると「裸の女」。単数形で定冠詞があるので特定の女の人のことのように読み取れるが、ここは総称としての「女性」の意味である。副題にあるように学術的な研究書だ。 といっても、内容は一般的な読者を対象に書かれている。章立ては、英語で身体全体を表すfrom head to feetのとおり、頭髪から足までの部分で構成されている。要するに、頭の上から巡る女性の身体巡りである。 しかしながら、男性との共通点や差異にも言及があり、人間としての身体論にもなっている。類人猿との対比もあるのは、著者が動物学者だ。生物学的あるいは進化論の視点からの論述からは、性別に関係なく、人に共通する動物としての能力を客観的に見直す機会にもなる。 身体機能の科学的な説明に加え、女性特有の化粧、装飾品、整形等への考察もある。腋臭と求愛との関係は、文字通り博物学的な匂いがする。 日本人女性も取り上げられていて、「お歯黒」や「小股の切れ上がった人」の日本語がローマ字表記で言及されている。両語とも死語になってしまったようだが、改めて、それぞれのことばの意味を考え直すと、日本人として異性を意識する眼差しが見えてくるようだ。 古代エジプトの口紅や、18世紀のイタリアで複数の男性を殺害した頬に塗る毒薬、魔除けとしてのイヤリングの起源等、歴史的、異文化的な逸話も多く、心を躍らせながら読み進めた。 眉の動きによる顔の表情、腕や手の動作での感情表現、異性間のジェスチャーの違いを再認識する場面もある。この点からは、本書は、男女間の良好な人間関係を維持するための指南書ともいえる。 著者はThe Naked Man:A study of the male bodyという本も書いている。アキラ100%に興味があるわけではないが、発注しようとしたら、運悪く「ご注文いただけません。」とのメッセージ。しかし、これであきらめないのが「読者」という動物である。