内容説明
一九七〇年前後まで、教養主義はキャンパスの規範文化であった。それは、そのまま社会人になったあとまで、常識としてゆきわたっていた。人格形成や社会改良のための読書による教養主義は、なぜ学生たちを魅了したのだろうか。本書は、大正時代の旧制高校を発祥地として、その後の半世紀間、日本の大学に君臨した教養主義と教養主義者の輝ける実態と、その後の没落過程に光を当てる試みである。
目次
序章 教養主義が輝いたとき
1章 エリート学生文化のうねり
2章 五〇年代キャンパス文化と石原慎太郎
3章 帝大文学士とノルマリアン
4章 岩波書店という文化装置
5章 文化戦略と覇権
終章 アンティ・クライマックス
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
147
そもそも教養とは何ぞやということから始まってて分かりやすく、如何に教養が没落して行ったのかを如実に記していたのでよかった。2010/12/03
たま
69
米津玄師(1)が最近言及して突然売れ行きが伸び、増刷になったとか。2003年初版なので私自身は当時読んだ可能性が高いが、すっかり忘れていて面白く読んだ。戦前戦後の文系学生の教養主義について彼らの出身階層、読書傾向のデータ、証言をもとに再構成している。戦前と戦後を往来する叙述がやや読みにくいが、著者の実感を交えた分析(2)が面白い。私自身は70年代に学生生活を送ったので、ここに描かれた階層差、地方と都会の差、教養主義が良く分かるとともに、消費文化の勃興期でもあったので、当時を思い出し懐かしかった。 2025/04/14
びす男
53
かつてあれほど学生を魅了した教養主義が、なぜかくも没落したのか。本は「教養主義」と「学歴エリート文化」の強い結びつきを示してから、巨大な「中間大衆」の出現とともにかつての魅力を失っていく「教養」の姿を描く。今日では、教養を身につけてメリットがあるのは一部の知識人に限られており、それらを目指さない「大衆サラリーマン」が教養にそっぽを向くのも道理である。単なる懐古趣味ではなく、「教養」とは何か、その没落とともに私たちは何を失いつつあるのかを公平に記述しているのが印象的だった。あとで書評かきます。2015/01/27
おさむ
43
大学生が本を読まなくなった、と言われて久しい。2003年に発刊されて話題を呼んだ本著は、その傾向は1970年代にすでに現れていたとし、かつての教養主義の衰退とパラレルの流れであったと説く。大学進学率が15%を超えて、大学に行くのがエリートと同義ではなくなったのと同時期でもある。大衆化が進んだ結果、大学はレジャーランドとなり、教養主義もキョウヨウ主義に変わり果てた。進学率が50%超えた大学は如何なる価値があり、どうあるべきかを考え直す時期に来ている気がします。2019/04/11
逆丸カツハ
42
ずいぶん前(8-9年前)から気にはなっていたが米津玄師がべらぼうに面白いと言っていたので手に取る。ホンマやん…。面白かった…。もっと早くに読めばよかったな。本当に自分は芋臭い人間だなぁと理解する。本読んで人格がよくなるかというと、そうでもないだろうとは思うが、教養主義的なものをすべて捨てるのもまた何か違うのだろうなぁ。2025/04/01
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