内容説明
双肌をぬぎ、太やかな腕を剥き出しにして、せっせと桶をつくる働き者のおろくは、息子の変事をきいて顔色が変わった。「これ、どうしたのだ?」「うちの子が、勾引(かどわか)されたんでございます」叫ぶようにいったおろくが、平蔵の手を振り切って家を走り出た。──幼児誘拐犯は、実の親か? 卑劣な犯罪を前にさすがの平蔵にも苦悩の色が……。「霧の朝」「妙義の團右衛門」「おかね新五郎」「逃げた妻」「雪の果て」「引き込み女」の六篇を収めた力作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
116
これは短編が6つ収められています。今回は、鬼平が裏を書かれて密偵が殺されたり、あるいは子供の絡んだ話や、女のサガのようなものを書いている作品が多く様々な味わいを楽しめました。2017/06/16
ポチ
60
忠吾の登場は嬉しかったが、内容は悲しかった。女性の哀しい話が多かった巻でした。そしてまた密偵が1人死んでしまった…。2017/06/15
s-kozy
55
シリーズ19巻目。短篇を六篇収録。うち二篇は連作になっている。今巻は男女のもつれを扱った話が多かった。江戸時代は今より女性や子どもの立場は弱かったんだろうな。密偵の馬蕗の利平治は残念でした。2015/05/12
酔拳2
42
池波正太郎先生は時代小説の本格派だが、結構偶然による事件が多い。本作収録の話は特にそう。そんな中でも直感で事件の本質を見抜く平蔵はさすが。「引き込み女」のお元は哀れだったなあ。その下手人は磯部の万吉らしいが、これはto be contenueという、鬼平では珍しい展開だな。2019/10/16
ベルるるる
38
密偵達は命を懸けて平蔵の為に働いている。だから殺されると、読んでて本当に辛い。2016/10/02