紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする 「キノベス!2016」
紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30「キノベス!2016」が決定しました!
「キノベス!」は紀伊國屋書店スタッフが自分で読んでみて面白かったのでお客様におすすめしたい本を選定(※)するものです。本年度のベスト30と第1位に輝いた宮下奈都さんのコメントを紹介します。
※2014年12月以降出版された新刊(文庫化タイトルを除く)の中から、ベスト30を選定。
「キノベス!2016」フェアは、2016年1月29日(金)より、全国の紀伊國屋書店にて一斉開催予定です。
スタッフが各作品に寄せたコメントを掲載した小冊子を店頭にて配布いたします。
みなさま是非お近くの紀伊國屋書店にご来店ください。
第1位 『羊と鋼の森』 宮下奈都
感想は言いません。この美しい小説を、先入観なく読んでほしい。宮下奈都という作家の名を、多くのひとに知ってほしい。「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ」。【室彩水・和書販売促進部】
新人のピアノ調律師として日々過ごす外村青年。彼が成長していく中で感じる小さな小石のような輝きがいつしか胸の内でダイヤモンドの煌きに変化していく。タイトルの絶妙さは読後にじんわり染みて来ますよ。【山崎蓮代・名古屋空港店】
キノベス第1位を受賞した『羊と鋼の森』の宮下奈都さんから特別コメントを頂きました。
「小さなこと、大きなこと」
私の小説は、ささやかで、大きなことが何も起こらない、とずっといわれてきました。そうか、そうなのか、と思っていましたが、十年書いておぼろげに見えてきたことがあります。小さなことと、大きなこと。どちらが大切で、どちらが尊いか、くらべる必要はないのです。ひとりの人間の中に変化が生まれる。それは、小さなことでしょうか。他の誰かから見れば、どうということのない、もしかすると気がつかないくらいのことかもしれません。でも、本人にとってはぜんぜん違います。
『羊と鋼の森』で、主人公がピアノの中に羊を見つけたとき、世界は変化します。彼が慎重に森へ一歩踏み出すとき、情熱を持って駆け出すとき、それを書いている私も変化していました。これでいいんだ、これを書きたいんだ、という確信めいたものが生まれました。
この『羊と鋼の森』でも、大きなことは何も起きていないといわれるならば、この世に起きていることって何でしょう。人が生きていくこと以上の物語がどこにあるのでしょう。鍵盤をぽーんと鳴らすだけで鼓膜にさざ波が立つように、そのさざ波がやがて心を揺らして人を変えるように、私は人と響きあいながら生きていきたい。そういう人の物語を書きたい。静かでも、目立たなくても、人が生きていく奇跡を、そのしみじみとした明るさを、書いていきたいと思います。それが、ささやかな、と形容されるなら、そのささやかさは誇ってもいいのではないかと思うのです。
このささやかな本を1位に選んでいただけて、とてもうれしいです。キノベス、いいなあ。この時季は毎年そう思ってきたけれど、今年は特別な年になりました。ああ、キノベス、いいなあ。ほんとうにありがとうございました。
宮下奈都さんプロフィール
1967年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。2007年に発表された長編『スコーレNo.4』が絶賛される。2011に刊行された『誰かが足りない』は本屋大賞にノミネートされた。その他の著書に『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『ふたつのしるし』『たった、それだけ』など。
第2位 『ホワット・イフ?』 ランド-ル・マンロ- 吉田三知世
ランド-ル・マンロ-、吉田三知世 / 早川書房
2015/06出版
ISBN : 9784152095459
価格:¥1,620(本体¥1,500)
「もし○○だったら?」と誰もが一度は想像したことがある現実離れした疑問の数々。この本は、そんなバカげた、けれどちょっと気になる疑問に元NASAの研究者でもある著者が物理と数学を使って全力で答えるという本です。「ステーキを宇宙から落としたら焼けるか」「ロンドンとニューヨークをつなぐ橋をレゴブロックで作るにはレゴが何個必要か」等の疑問を1つ1つ検証していく様子に思わずワクワクします。物理が好きな人はもちろん、物理と聞いただけで頭が痛くなってしまう人も、絶対笑える1冊です。【金成彩子・堺北花田店】
※決して真似しないでください。【宮澤千絵・厚別店】
第3位 『君の膵臓をたべたい』 住野よる
「君」になりたいと思い続けた主人公が、影響を受け変わっていく様子に涙が溢れました。「その人そのものになりたい」と思う気持ちは、愛や恋よりも一番純粋な気持ちなんじゃないかと思います。「君が好きだ」と言われるよりも「君の膵臓をたべたい」と言われる方が何倍も嬉しい!【宮澤紗恵子・新宿南店】
すごく衝撃的なタイトルですがそこに隠された想いと意味深さにとても感動しました。明日があることが当たり前ではなくなり、「一日一日を後悔なく生きよう」そう思わせてくれた物語です。【兼松千賀子・グランドビル店】
第4位 『流』 東山彰良
台湾について考え始めると、いつも答えのない袋小路に行き着いてしまう。日本統治時代のこと、中台関係、尖閣諸島問題......。本書で描かれているのは、そうした問題とは別の次元で自らの人生に悪戦苦闘する人々。その主観性に真実を見た気がした。【平田直也・微風店(台湾)】
第4位 『もうぬげない』 ヨシタケシンスケ
かわいい。シュール。そんなことばに収まりきらずにあふれだした世界にもう虜です。大人に、こどもに、と限定せず、すべての人が「なんか気になっちゃう」魔法の本。【安田有希・横浜みなとみらい店】
第6位 『ダンジョン飯』 九井諒子
「ひきだしにテラリウム」や「竜のかわいい七つの子」を生み出した鬼才、九井諒子の初長編作品。冒険者たちが襲い来るモンスターを調理し、ダンジョンを攻略するグルメ(?)ファンタジー。近年流行に乗って増え続けるグルメ漫画に一石投じるような斬新な切り口で魅せる作品だ。【鈴木栞・札幌本店】
第7位 『永い言い訳』 西川美和
愚かで非力な人間の「ままならなさ」を、徹底したリアリティで描いた素晴らしい(×100!)作品。「どうしてあの時、大切な人を傷つけてしまったのだろう」―そんな後悔を抱えて生きる全ての人に読んで欲しい!「愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償は小さくない」というモノローグが忘れられない。他の作品はちょっと考えられないくらい、ぶっちぎりで今年のベスト1!!【佐貫聡美・新宿南店】
第8位 『生きて帰ってきた男』 小熊英二
客観的な見方で語られる個人の生涯は、著者と語り手が親子という関係だからでしょうか、とても自然に読み進められます。しかしながら読み終えた時に、戦前・戦中・戦後を生き抜いてきた一人の偉大な人生がずっしりと浮かび上がってきます。当時の暮らしの細部がその時代の大きな流れとともに描かれ、戦争の実状を改めて考えさせられました。【清水諒・新宿本店】
第9位 『ママがおばけになっちゃった!』 のぶみ
第9位 『教団X』 中村文則
このページ数、中村文則じゃなかったら読まないよ!辞書じゃないんやから。なんやったらこれって凶器になるぶ厚さやし。しかもページをめくる手が止まらなくて一気読みして寝不足って本好き泣かせの1冊だ!【小泉真規子・梅田本店】
第11位 『厭世マニュアル』 阿川せんり
他人とうまく関われない、マスクをつけないと落ち着かない、さらにはマスクと会話する。「痛い」要素充分なのに、なぜかキュートに感じる不思議。がんばれ、でも無理はしすぎなくていいんだよ?ただの成長物語と思ったら大間違い。【朝加昌良・ゆめタウン徳島店】
第12位 『僕の隣で勝手に幸せになってください』 蒼井ブル-
第12位 『戦場のコックたち』 深緑野分
物語の終盤、ただレシピを読み上げるだけの場面に、しびれるような感動をおぼえました。凄惨な戦場にありながら、食べる人のことを考え、料理をつくる。そんなコックたちの姿は、困難な状況で、それでも誰かのことをおもんばかろうとする、人の心の可能性を信じさせてくれます。第二次大戦のアメリカ兵という、時代も国も遠く離れた人々のことを、その難しさを越えて描ききった、この現代日本の小説そのものと同じように。【原元太・首都圏西営業部】
第12位 『山怪』 田中康弘
第15位 『陽気なギャングは三つ数えろ』 伊坂幸太郎
第15位 『りゆうがあります』 ヨシタケシンスケ
第17位 『帳簿の世界史』 ジェイコブ・ソ-ル 村井章子
第17位 『朝が来る』 辻村深月
第19位 『ちょっと今から仕事やめてくる』 北川恵海
おせっかいで人を救う!お金をかけなくても、誰でもできること......、おせっかい。みんなが少しずつおせっかいになれば、最近よく耳にするイヤなニュースなどなくなるんじゃないかな。だから私は、おせっかいを推奨します! きっと、その先にほっこりすることがあるはずだから。【助川智衣・いわき明星大学BC】
第20位 『世界の果てのこどもたち』 中脇初枝
あの時、必死で生き抜いてくれた人たちがいたから。今、自分がここでこうしていられること、あたりまえすぎて普段は気にもしないことに改めて気づかせてくれた大切な1冊です。ただただ、読んでほしい。【吉田咲子・徳島店】
第21位 『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』 ルイス・ダ-トネル 東郷えりか
第22位 『忘れられた巨人』 カズオ・イシグロ 土屋政雄
第23位 『呪文』 星野智幸
第24位 『ワンダ-』 R.J.パラシオ 中井はるの
児童文学は読まないなんてもったいない! 心が揺さぶられる、みんなに薦めたくなる小説です。【鍋倉加菜美・洋書店売部】
第25位 『美術館で働くということ』 オノユウリ
第26位 『火花』 又吉直樹
先輩と後輩とその周りの人々による、お笑い芸人の日常を描いた私小説風の作品。プロのお笑い芸人という職業は、テレビや地方営業などでの商業的な部分はごく一部で、それ以外の時間は日常の中で「芸」とは「笑い」とは、についてひたすら考え抜く、孤独で芸術的な作業なんだなと感じました。【窪園由希・シンガポール店】
第27位 『ふまんがあります』 ヨシタケシンスケ
第28位 『その可能性はすでに考えた』 井上真偽
第28位 『恋は雨上がりのように』 眉月じゅん
第28位 『SAPEURS』 ダニエ-レ・タマ-ニ 宮城太
SAPEURS THE GENTLEMEN OF BACONGO
ダニエ-レ・タマ-ニ、宮城太 / 青幻舎
2015/06出版
ISBN : 9784861524998
価格:¥2,484(本体¥2,300)