内容説明
「勉強ができて何が悪い。生まれつき頭がよくて何が悪い」そう思いながらも、目立たぬよう眠鏡をかけ、つくり笑いで中学生活をやり過ごそうとする遙名。高校に行けば、東京の大学に入れば、社会に出れば、きっと―。「まだ、まだだ」と居心地悪く日々を過ごす遙名は、“あの日”ひとりの青年と出会い…。息をひそめるように過ごす“優等生”遙名と周囲を困らせてばかりの“落ちこぼれ”ハル。「しるし」を見つけたふたりの希望の物語。
著者等紹介
宮下奈都[ミヤシタナツ]
1967年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選。07年、初の単行本『スコーレNo.4』が、書店員からの熱烈な支持を得て話題となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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風眠
250
ぜんぜんドラマチックじゃない。奇跡のような恋を描いているのに地味。けれどこの物語は、これからもずっと私の記憶に残っていくと思う。温之(ハル)と遥名(ハル)が出会い結婚に至るまでの30年間。繊細だけれどグサリと刺さる感情描写や、そっと散りばめられた伏線にハッとする。人と同じでなくていい「いざという時に2割の自由な蟻たちは力を発揮する」という自分の存在価値を信じて。そして3.11、ふたりのハルは出会う。「運命」ではなく「しるし」によって。ふたりの娘・柏木しるしの「生いたちの記」という作文で締める構成が心憎い。2015/06/07
takaC
206
「しるし」を持つ2人のお話。展開が気になり一気読み。2017/08/12
ナイスネイチャ
197
図書館本。ハルという不思議くんと優等生遥名の人生を子供の頃から綴った物語。終始ハルくんしか頭に残りませんでした。ただ最後の章での蟻の下りはうまいなぁとは思いましたが、二人の出会いはちょっと強引かなと。2015/02/11
mariya926
137
同じハルという名前で、幼い頃から一緒にいたのかと思いきや、完全に違う環境の中でかなり後に出会ったので想像していたのとかなり違いました。恋愛小説だと説明にあったので、どんなラブラブなのかと思いましたが、思ったよりあっさり系でした。というか、恋愛期がカットされていました。ちょっと残念。でも二人の歩みの中でこの人っていうしるしがみつかって良かったです。特にハルは今の時代だったら発達障害だと診断されていると思いますが、遥奈と娘さんの上手いフォローやいい人たちとの出会いで素敵な人生が歩めています♪2020/01/08
けい
120
二人の半生を描く物語。一人目は温之『ハル』小さい頃から蟻の行列をジッと見つめる、いわゆるボーっとした子。もう一人は遥名、賢い美人の女の子。でも周りを気にして自分を抑えている。そんな二人の成長して行く事の悩み、周りとの違和感、わからなくなっていく自身を描いていきます。ある日二人の人生が突然触れ合って・・。この短い文章で二人の半生を見事に描き切った宮下さん凄いです。最後にちょっとだけ出てくる「しるしちゃん」がもったいないくらい、いいキャラ。読み終えた後、自然と笑顔になる、いい作品でした。2014/12/02