内容説明
「いつの世でも、人が生きてゆくということは、むずかしいものである」(序より)
正史にもとづいた大作『三国志』全12巻を書き上げた著者が、時代の潮流の外にいながらも忘れがたい12人の生涯をたどった。
『三国志』をあらわした陳寿(ちんじゅ)、輝ける倫理観と志望をもっていた太史慈(たいしじ)、魏の名臣・王粲(おうさん)・・・。
ある者は、権力者や政治の中心に近づきながら、遠ざかることを余儀なくされた。その苦難をどのようにしのいだのか。曹操、孫権、劉備、関羽といった英傑たちとはことなり、歴史の中で一瞬だけ輝いた人生。その輝きが愛惜の念とともに描かれる。
著者による後漢・三国年表つき。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
51
図書館本。三国志に登場する有名無名の人物達の評伝のような、小説のような。歴史に埋没しがちな人物達だけに、このような形で読めるのは面白い。★★★☆☆2022/05/22
ジュール リブレ
40
巻末にたどり着いて年表を見た時に、本当の三国志の時代は、たった86年だったのだと知らされる。膨大な資料と文献にあたり、歴史絵巻を日本語であらわしてくださった宮城谷翁に感謝です。本作・外伝では、主役になりきらなかった人々にフォーカスを当てていますが、本当は、『三国志』を書いた陳寿を描いてあげたかったのかな。そう思いました。この時代に生きて、その才能を活かしけれたとは言えないけれど、時代と共に生きて、見届けて、最後まで語りあげた。そんな姿を自らに重ねたのかな。そう思わされました。十二巻+一巻、読了です。2019/11/16
楽
33
14年。宮城谷昌光を読むと自分でも書きたくなる。そんな魅力のある文章である。漢字に対する造詣の深さ、そしてリズムの心地よさ。司馬遼太郎にも通じるものがある。『史記』『後漢書』『三国志』などの史書から引くにしても隙間の埋め方が絶妙である■しかし。宮城谷『三国志』本編全12巻は新刊が出たらハードカバーで即購入していたが、尻すぼみに終わったのは残念だった。後漢の光武帝劉秀を描いた『草原の風』も肩透かしを喰ったので、長編に手を出すのは怖い。となれば、短評、短編の人物評であればまず外れはなかろう■続きはコメントへ。2021/05/10
Mzo
23
そもそもが宮城谷三国志は、三国志通でも知らないような人が多数登場する。それなのに、外伝ともなったら…と身構えていたが、意外と名前は知っている人が大半だった。このように、人物の生い立ちを繰り返し描くのが、本来の紀伝体であり、三国志を含む史書の面白さなのかな、とも思う。宮城谷三国志、全巻通して再読したくなりました。2016/10/11
Tomoichi
20
著者の三国志全12巻を読んで時間が経ち忘れて内容をこの「外伝」で改めておさらい出来ました。本編で詳しく紹介できなかった12人の物語。乱世は面白い人々を産み落とし、無残に殺していく。病死や若死でも天寿を全う出来れば幸せかもしれないが、幸運は子孫まで続かない。人生って難しい。。2016/11/10