内容説明
司馬遼太郎の豊かな短篇の楽しみ
直木賞受賞前の2年間に書いた短篇16篇を収録。「面白倶楽部」「講談倶楽部」など商業誌に発表したものが大半を占めるようになる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
29
1958~59年、直木賞受賞作品「梟の城」執筆同時期に描かれた短篇集。歴史物(古代、戦国、江戸、幕末)、コテコテ大阪商人物、ミステリー調、エロティカ風、私小説風等バラエティーいっぱいの16編。言わば、小説家としてブレイク前の気負いと野心や色気が感じられる作品のオンパレードで思った以上に楽しめた。とりわけ、口入れ屋の女主人と勤王の三岡八郎、新選組の山崎蒸を巡る友情と松じじいの妄想エロティカ物語「法駕籠のご寮人さん」(史実に基づくか?)が印象的。2022/08/02
moonanddai
8
昭和35年に出た推理小説「豚と薔薇」で、ご本人は「もう二度と推理小説は書かない」といい、全集にも入れなかったようですが、それ以前には殺人事件を題材とする話も書いたようで、また同時期に書かれた「梟の城」と似たようなプロットのもの(当然登場人物は違うのですが…)があったり、「空気を絞って水を滴らす」ようにして書かれた苦労が分かるようです…。「法駕籠のご寮人さん」が、登場人物といいオチといい、面白かった。2023/12/24
ジャズクラ本
8
再読◎執筆時期は1958〜59年。「伊賀源と色仙人」「十日の菊」など、この頃はまだご機嫌な大阪の市井を描いた小説を手がけている。その中でも「大阪醜女伝」は爽快感と悲哀感が混在する痛烈な作品。また「マオトコ長屋」「和州長者」には多少の推理小説風味が感じられるが、これは後の長編「豚と薔薇」につながるものか。「白い歓喜天」については書ききれないのでコメント欄に。そしてこの頃から「大坂侍」「難波村の仇討」「法駕籠のご寮人さん」など幕末物と忍者小説の比率が多くなっていく。「神々は好色である」は珍しい神代小説。2015/09/01
がんぞ
8
昭和33年は『梟の城』で直木賞を受賞、翌年は、みどり夫人と再婚し、社を辞しプロ作家となるのを決意した年。プロ作家は(生計上からも人気維持からも)短編小説(つまりオチのある話)を供給しなければならない。戦後最大のベストセラー『竜馬がゆく』は幕末の佐幕・倒幕の記述にビジネス感覚をもちこんで斬新だったが、本巻の作品群も舞台は戦国時代だったり商業地大阪だったりビジネス(金銭・貸し借り・損得にこだわる)感覚をテーマとすることで共通する。忍者を人材派遣ビジネスと捉えた『下請忍者』は『カムイ外伝』先駆/古事記神話題材も2017/05/14
AR読書記録
7
大阪モンはほんまおもろい。読んでたらなんや口調が移ってくるわ。歴史物だと、実直な、寡黙な、あるいは超然とした人物に興味の在りどころがある感じだけど、こういうアクの強い人間も司馬さん大好きなんだなーって思う。あと、同じ題材で二作書いている(のが続けて読める)のとかも面白いな。史実に基づくようで結構創作入ってんだな。しかし、こうまとめて読んでるとやっぱちょっと気になってくることとしては、女性像がな。いかにも男が想像して書いてるって感じでな。2016/04/18