内容説明
キリスト教を公認した「大帝」コンスタンティヌスの死後、その親族を襲ったのは血なまぐさい粛清であった。生き残ったコンスタンティヌスの甥ユリアヌスは、多神教の価値観に基づく寛容の精神とローマ的伝統の復活を目指した。だが、その治世は短命に終わり、キリスト教は遂にローマ帝国の国教の座を占めるに至るのだった……。西洋人とは異なる視点で激動の時代を描く必読の巻。 ※当電子版は単行本第XIV巻(新潮文庫第38、39、40巻)と同じ内容です。
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行雲斎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
70
キリスト教を擁護したコンスタンティウスは、身内を何人も殺し宦官たちの言いなりだったにも関わらず聖人とされ、すべてを自分で考え自分で行動しローマ帝国をミラノ勅令当時のローマに戻してすべての宗教に寛容であろうとしたユリアヌスは「背教者ユリアヌス」という不名誉な名をつけられた。そして、最後の章は、もはや皇帝ではなく、司教。ローマの最高権威者は、皇帝ではなく司教になってしまったということなのだろう。2021/07/03
kk
35
建国以来どんな時にもローマを支え続け、ローマをローマたらしめてきた千年のアイデンティティが、4世紀末に至り、ついに永遠に失われてしまいます。この下りに際しての塩野先生の述懐、本当に素晴らしい文章だと思います。「だが石碑は 、それに手をふれ石の冷たさを感じるだけで 、現代から古代に 、一気に戻らせてくれるものでもある 。ひっそりとたたずむシンマクスの石碑は 、なおいっそうそのような想いにさせる 。それもとくに 、秋も終わり 、ミラノのスカラ座の開幕が近づいている季節ではなおのこと 。」2019/09/27
James Hayashi
31
ローマ帝国の滅亡、崩壊でなく溶解と著者は言及。終焉の前に帝国の存在を無くしてしまっているため。フン族、ゴート族の侵入を許し、国内ではゼウス(ラテン語でユピテル)やオリンピアの途絶。国内の分担統治も東西分裂へと向かう。皇帝が司教に跪く。ローマの多様性はキリスト教の前に屈する感じ。国教と化すキリスト教。残すは1巻のみ。2018/04/14
那由田 忠
25
『キリスト教とローマ帝国』でキリスト教が広がった理由や背景を理解し、塩野さんの説明が知りたかった。歴史小説家は、資料から読みとった人物像で史実を解釈する。面白い反面キリスト教の広がる理由は十分に見えない。313年のミラノ勅令をキリスト教公認とせず、弾圧をやめたが皇帝の庇護を受けたと説明。宗教組織のあり方から影響を述べる。392年異教徒禁止令=国教化を述べないのが不思議。洗礼を受けたテオドシウスは、司教の前で羊として従ったことを強調。廃仏毀釈と同じ神像破壊の中で、抵抗した人がいてきれいな像が残ったと推測。2018/12/29
俊
25
コンスタンティヌスから始まったキリスト教優遇政策はその後の皇帝たちにも引き継がれ、キリスト教は益々大きな力を持つようになる。唯一皇帝ユリアヌスだけは反キリスト的姿勢を見せるが、即位して2年程で戦死してしまったため、時代の大きな流れを変えることはできなかった。その後テオドシウスのキリスト教国教化政策によって、キリスト教の勝利が確定する。このことに対して、現代の、それも非キリスト教徒から見ると、どうしても「ローマの寛容な世界から一神教の不寛容な世界への移行」といったネガティブな印象を持ってしまう。2014/05/26
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