内容説明
紀元2世紀初頭、ダキアとメソポタミアを併合して帝国の版図を最大にした初の属州出身皇帝トライアヌス。帝国各地をくまなく視察巡行し、統治システムの再構築に励んだハドリアヌス。穏やかな人柄ながら見事に帝国を治めたアントニヌス・ピウス。世にいう五賢帝の中でも、傑出した3人の業績を浮彫りにし、なぜ彼らの時代が「まれなる幸福な時代」たりえたのか検証する。 ※当電子版は単行本第IX巻(新潮文庫第24、25、26巻)と同じ内容です。
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行雲斎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
76
五賢帝の最初と最後の二人を除いた三人の皇帝の治世が描かれている。初めての属州出身皇帝で、ダキア戦役に勝利しただけでなく、多くの公共事業を行い、謙虚で、皇帝とは関係が悪化しがちな元老院からもうけがよく、元老院からそれまでの皇帝の誰一人として受けることがなかった「最高の第一人者、至高の皇帝」の称号を授けたトライアヌス。その治世のほとんどを属州視察に費やしたハドリアヌスは、トライアヌスの死の直前の次期皇帝の任命がいささか不透明だったことや反ハドリアヌス派が結集し始めると中心人物4人を暗殺させたこと、⇒2021/05/29
ロビン
18
9巻は、初の属州出身の皇帝で「ダキア戦役」に勝利し帝国の領土を最大にしたトライアヌス、『テルマエ・ロマエ』で市村正親さんが演じ、またユルスナールの小説で有名なハドリアヌス、ガリア人の祖先をもつ慈悲深い人格者アントニヌス・ピウスと「五賢帝」のうち3人の治世を扱う。ローマ皇帝たちを悩ませてきたユダヤ問題に対する基本姿勢ーローマに反旗を翻さない限り自治を認めるーがハドリアヌス時代に大幅な変化をきたし、ユダヤ人がディアスポラすることになるくだりが、異文化間の摩擦や誤解、また共生について考えさせられ印象的であった。2022/07/30
俊
18
五賢帝と言われた内の三人、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスを描く。トライアヌスは至高の皇帝と言われ、後世の君主達にお手本にされたほど優秀な皇帝。ダキア遠征、パルティア遠征を行い、この時代にローマは最大の版図となった。ハドリアヌスは治世の三分の二を地方視察に費やし、各地の防衛やインフラ整備を熱心に行った。その際プリタニアに築いたハドリアヌスの長城が有名。この人も優れた人だったが、「一貫していないということでは一貫している」と評されたほど複雑な人柄で、晩年は特に気難しくなってしまったようだ。2014/04/26
星落秋風五丈原
14
なんか、このシリーズが発刊されると、「ああ、今年も終わりに近づいたのかな?」と思います。この年は五木寛之さんとの 対談もあったし。盛りだくさんで嬉しい一年でした。2003/10/13
kitten
10
ローマ人の物語も9巻。 パックスロマーナ、五賢帝の時代。ローマ帝国の最盛期。 トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三皇帝だが、 トライアヌスとハドリアヌスで約180頁ずつ使っておいて、 アントニヌス・ピウスは30頁で終わる。w しかし、偉大さで言えばこの3人は歴代皇帝でも最上位に来るだろう。 皇帝って、帝国のしもべなのかも。 みんなにお手本を示すべく、明らかに働きすぎのトライアヌスと ハドリアヌス。そのおかげで、穏やかなアントニヌスの治世は 穏やかに過ぎ去っていった。2016/09/03