内容説明
紀元3世紀、もはやローマは幾多の危機を乗り越え発展しつづける「栄光の覇者」ではなくなっていた。経済は低迷し、蛮族の侵入が相次ぐ中、皇帝捕囚という未曾有の国難にも見舞われる。皇帝たちの懸命の努力とは裏腹に、帝国は衰退の階段を着実に下り始め、キリスト教の台頭が始まる……。「危機の三世紀」、その現実を描き尽くした力作。 ※当電子版は単行本第XII巻(新潮文庫第32、33、34巻)と同じ内容です。
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行雲斎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kk
24
日本では卑弥呼がブイブイ言わせ、中国では曹操とか諸葛亮とかがバトルロイヤルを楽しんでた時代のローマ帝国。ここにきていきなりの「土砂降り」的な展開。蛮族怒涛の侵入、悪疫の猖獗、政治指導部の不安定、公共心の低下と自信の喪失。ローマをローマたらしめてきた、古代市民的な価値に基づく共同体は崩壊の危機に瀕し、その間隙を窺うかの如き、新宗教風靡のきざし。だんだん読むのが辛くなってくるね。でも、しっかり最後まで見届けなきゃね。2019/05/27
俊
20
73年間で22人もの皇帝が即位した混迷の時代を描く。この22人の皇帝の殆どが部下に謀殺されるという異常な事態。普通の国ならこの時点で滅んでいただろう。ここでまだ持ちこたえる辺り、腐ってもローマといった感じがする。この時代にカラカラ帝とガリエヌス帝は、全属州民のローマ市民化、元老議員の将官クラスからの排除という二つの法律を作成する。どちらも必要に迫られて作った法律だったが、前者は税収の低下と民衆の向上心の減少、後者は議員の軍への影響力低下という結果をもたらす。ローマの「らしさ」が失われつつあるのが悲しい。2014/05/17
ロビン
17
12巻は、皇帝カラカラからディオクレティアヌスまでの73年間にもう両手では数えきれないほどの数の皇帝が擁立されては殺害されていく(皇帝の名前を記憶しようと頑張っていたが途中であきらめた)。皇帝たちの政策が勘所を外すようになり、東方ではパルティアに代わりササン朝ペルシアが台頭したうえに皇帝ヴァレリアヌスがペルシア王の捕虜となり、更に「パルミラ帝国」が勝手に振る舞う。北の蛮族も質が変わりガンガンローマ帝国内に侵入、どさくさにローマの将軍が「ガリア帝国」を作るしで、カオスである。よく瓦解せず踏ん張ったものだ。2022/08/08
星落秋風五丈原
12
ローマはもはや、危機を糧とし発展しつづける覇者ではなくなっていた。経済は低迷し蛮族の進入が相次ぐ中、皇帝はめまぐるしく入れ変わる。帝国の衰退を決定付けた「危機の三世紀」の実相に迫る。2004/01/24
橋川桂
10
よくもまあ次々と、という苦難の連続。ぼーっと読んでるとうっかり読み飛ばしちゃった間に皇帝が殺されてる。違う時代なら賢帝と評されたろう手腕を振るった人もいるだけに、時代が悪かったとしか言いようがない。2017/11/21