内容説明
紀元前3世紀後半、イタリア半島統一をなしとげ、興隆の途についたローマ人が初めて大きな危機に直面した。北アフリカの強国カルタゴとの直接対決。象を伴ってアルプスを越えた規格外の名将ハンニバルと、ローマの全権を託された若き執政官スキピオ。地中海の覇権を賭けたポエニ戦争はいかなる結末を迎えたのか――。 ※当電子版は単行本第II巻(新潮文庫第3、4、5巻)と同じ内容です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
42
海戦を知らないローマと、地中海随一の海軍国と言われ勢いに乗っているカルタゴがシチリアを舞台に繰り広げるポエニ戦争。これは地中海の覇権に繋がる戦いであり教科書にも載っていた。しかしこれ程興味深い戦いは現代でも目を見張る。戦略家は今でも研究課題として取り上げるというハンニバルに対するスキピオ。三国志も水滸伝ももちろん面白いが、彼らの対戦は実戦である。16年に渡る戦争で10万人以上の死者を出しながら、講和を報復措置としていない事にまた驚かされる。この巻だけでも読む価値がある。2017/11/08
夜間飛行
42
ハンニバルが大胆にもローマ城外を散歩した際、城壁に鈴なりになる市民……子供を叱る時の「戸口にハンニバルが来ている」という言葉を生んだこの逸話から、この男をローマ市民がいかに恐れたかがよくわかる。とはいえ、彼はローマの真価を知らなかった。彼の軍隊がいかに無敵であろうと、三万人が敵地で食いつないでいくためには略奪をくり返すしかなかったのだ。長年の信義に培われたローマ連合が、このような恐怖によって崩れ去るはずはない。やがてカンネの敗将達の駐屯するシチリアに、若き執政官スキピオが赴任する。ローマの反撃の始まりだ。2013/05/04
キムチ27
34
ハンニバルの闘い1,2回戦。特に2回戦は戦時期間が短かったにも拘らず、後世への影響が強い事をかなりのページ数を割いて強く論じている。敗戦の責任者を死刑に処したカルタゴ、罰しないローマ。闘将ハンニバルが吐いたセリフは仮に曲解されているにせよ、説得力の余りある内容であり、2000年後、ナポレオンがアルプス越えを決するにおいて兵士らに繰り返し用いている・・その凄さ。 ハンニバルもスキピオも記録係をずっと随行させていたどちらもギリシャ人。哲学としてのギリシャ語、思想の有意である事は万人が認めていたのであろう。 2013/12/30
fu
28
ハンニバルとスキピオの名将二大対決。ローマが、カルタゴの敵将ハンニバルによって鍛えられ、強国へ育ってゆくこの矛盾。古代ローマの大らかな統治が、崩壊していく様が残念。外敵が滅びようやく平穏かと思いきや、次は内敵が登場。老齢の名将はついには内敵に足を引っ張られる。スキピオはさぞ無念だっただろう。 2015/01/07
kai
27
現チュニジアの都市国家カルタゴから冬期アルプスを越え、約15年以上イタリア半島に居座り暴れ回る天才戦術家ハンニバルが凄い。現在でもハンニバルの戦術を世界の軍隊の研究材料になっているとは驚きだ。ローマ史上最大の敵、ハンニバルとスキピオ・アフリカヌスの対決もスペクタルすぎて脳が震える。もう司馬遼太郎を真っ青だ。カエサルが出てきたら物語の展開はどうなるのだろう。読み進める喜びを今感じている。2018/03/26