内容説明
志なかばに倒れたカエサルの跡を継いだオクタヴィアヌスは、共和政への復帰を宣言。元老院は感謝の印として「アウグストゥス」の尊称を贈ったが、彼の構造改革の真の意図は別のところにあった……。半世紀をかけて静かに帝政を完成させ、広大な版図に平和をもたらした初代皇帝の栄光と苦悩を、あますところなく描いたシリーズ最高傑作。 ※当電子版は単行本第VI巻(新潮文庫第14、15、16巻)と同じ内容です。
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行雲斎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
66
ローマ統一後の過熱状態を冷却した手腕において、三十半ばのアウグストゥスはカエサルに匹敵する政治力を示している。五十万の兵士をただリストラするのではなく私財を擲って入植先を確保し、統治し易い属州は元老院に任せて、自身はガリアやシリアなど辺境を担当した。元老院には楽をさせ、自らは前線で軍制・税制改革、インフラ整備、入植、交易を一手に引き受けたのである。これができたのは若さ故という著者の言葉に納得した。年老いて統一事業に着手するしかなかったカエサルは不運だが、若いアウグストゥスの静かな「戦い」には美しさがある。2015/03/10
James Hayashi
37
カエサルとアウグストゥスの柔軟性を感じた。属州になった近隣国であるが、カエサル亡き後も反旗を振り上げていない。税制面の優遇もあったがそれだけでは無いと思う。 この時代にすでに少子対策がとられ、退職金なども整備されていた。安全保障、国勢調査、姦通罪もしかり。2017/11/20
ロビン
22
「父」にして天才カエサルの敷いたローマ帝政の基本路線を、その意志の強さと深謀遠慮ー共和政に復すると見せかけ、実質的には少しずつ帝政を進めていく卓越した手腕によってー見事に後継・発展させたアウグストゥスの長い生涯を描く。彼の物語は地味であるとの評もあるが、私は派手なカエサルの物語よりも興味深く読んだ。恐ろしい人ではあるのだが、祖国のため公私を厳しく律し、巨大化したローマの患部を見抜き、一つずつ的確に治療・改善し、絶えず血管に良き血を流れせしめるその洞察力と政治力、その地道にしてまめまめしい努力に打たれる。2022/06/22
俊
22
ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスことオクタヴィアヌスは、常に自己制御を心がけた理性的な君主だった。著者は彼を「天才の後を継いだ、天才ではない人物」と評している。確かにカエサルのように「派手な」天才性はなかったけれど、多くの業績を残した偉大な人物であることは間違いない。軍縮と軍事改革を同時に進行させ、ガリア等の新しい属州と古くからの属州の支配をそれぞれ固め、東方の問題を外交で解決する。凡人ではこうも上手く帝政の基礎を固めることはできなかっただろう。2014/04/11
kai
18
古代ローマによるパクスロマーナ(覇権による絶対的平和)だが、つい最近までは米国によるパクスアメリカーナと言われていたが、終焉は近づいているし、あるいは時代は変わったのかもしれない。著者は米国の選挙制度こそ、アウグストゥスが行ったローマの模倣をしていると記している。言われてみるとなるほど、と思う。AmazonプライムでBBCと米国ケーブルTVが共同制作した全22話のTVドラマを見た。制作費に200億円費やしただけあって時代背景、衣装、建造等にこだわりを感じ、よりローマ人シリーズに対する思いが高まった。2018/05/28