内容説明
広大な版図を誇り、平和と安定を享受した五賢帝時代。その掉尾を飾り、「哲人皇帝」としても名高いマルクス・アウレリウスの治世は、配慮と協調を尊んだことで、後世からも高い評価を得てきた。しかし、その彼の時代に、ローマ帝国衰亡への序曲が始まっていたのだとしたら……? 現代にも通じる鋭い洞察に裏打ちされた、一級の指導者論。 ※当電子版は単行本第XI巻(新潮文庫第29、30、31巻)と同じ内容です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kk
23
五賢帝の掉尾を飾るマルクス・アウレリウスと、その後のタフな時代を象徴するかのようなセプティミウス・セヴェルスの評伝を中心に。賢帝の治世の下、我が世の春を謳歌するローマ帝国。しかし、その空前の繁栄の傍、東北方からは大きな転換の波が、暗い足音とともに兆しつつある。そうした中で、かつてカエサルが標榜した「クレメンティア(寛容)」の精神を忘れつつあるかのような新指導者。時代の転機はすぐそこまで迫ってきているようです。2019/03/21
俊
23
五賢帝最後の一人マルクス・アウレリウスとその息子コモドゥス、そして、数年の混乱を経て皇帝に即位したセプティミウス・セヴェルスの時代を描く。今まで停滞はあっても基本的に右肩上がりだったローマも、いよいよ衰退の時代を迎える。一般的にはコモドゥスの治世からその衰退は始まったとされているが、本当にコモドゥスだけのせいなのか?賢帝と言われるマルクス・アウレリウスにも原因の一旦があるのでは?という著者の提言には説得力があった。確かにマルクス帝は個人としては模範的な人間で、平時の指導者としては申し分ないように思う。 2014/05/09
ロビン
22
11巻は、五賢帝最後の一人マルクス・アウレリウス、その息子コモドゥス、皇帝暗殺を受けての内乱の時代-ペルティナクスの短い統治の後、ユリアヌス、アルビヌス、ニゲル、セヴェルスによる皇位争いー、それを勝ち抜いた軍人皇帝セヴェルスの時代を描く。政治とは非情なもので、セヴェルスが心からローマの繁栄を願って行った種々の改革が、徐々に帝国を変質させ、後々逆の結果を招くことになるという。名君と名高いアントニヌス・ピウスやマルクスが本当に失政をおかしていないかの検証もなされる。段々塩野さんのカエサル熱が感染ってきた・・。2022/08/05
umeko
11
これだけの帝国が崩壊するには、多くの要因があるのだろうが、まだほころび始めたばかり。いよいよ次巻からは、崩壊に向かうのね。2010/12/22
小葉
11
世襲制は内戦を防ぐためのものというのには、第3部の「内乱の時代」を読むとなるほどなぁとも思いますが、若い我が子への世襲・血へのこだわりって、結局は暴君を生んでいるって気もします。カリグラとコモドゥスがだぶって見えます。二人の皇帝の同時就任なんてのがあったんだねぇ。映画っていうのはフィクションであり、必ずしも歴史に忠実ではないというのを心しておかないといけないんですね。2010/02/25