内容説明
蛮族の侵入や政変が相次ぎ、未曾有の危機に陥った帝国に現れた2人の皇帝。ディオクレティアヌスは皇帝4人による領土の分割統治を実施し四頭政治を導入。跡を継いだコンスタンティヌスは、ローマ帝国に幅広く浸透していたキリスト教公認に踏み切った。しかし、帝国復権を目指した彼らの試みは、皮肉にも衰退を促す結果を生んでいく――。塩野版「ローマ帝国衰亡史」、いよいよ佳境に! ※当電子版は単行本第XIII巻(新潮文庫第35、36、37巻)と同じ内容です。
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行雲斎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
66
ディオクレティアヌスは、ローマ帝国を四分割統治とした。もちろん自分以外の三人を決めたのは彼だし四人には明らかな順列があった。だが四人は自分の統治地区について絶対的な権力を持っていた。そして、最高位のディオクレティアヌスが統治したのは、ローマではなく東オリエントだった。四分割はローマ帝国の長い国境線を守るための苦肉の策だが、ローマ帝国の心臓部であるローマに最高位の皇帝がいないのは、明らかに異常だ。属州生まれの軍人皇帝には、ローマとは、もはやそれほど重要な土地ではなかったということなのだろうか。⇒2021/06/26
kk
26
ローマ帝国晩期において比類ない存在感を示した二人の皇帝、ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスを中心にした物語。打ち寄せる危機と累積する社会矛盾への回答としての、ローマ的アイデンティティの大変容、そしてキリスト教の体制取込み。「これほどまでして 、ロ ーマ帝国は生き延びねばならなかったのであろうか 」この述懐は、著者だけでなく、ここまで読み進めてきた全ての読者の胸に迫るものがあります。2019/08/13
俊
22
3世紀後半の蛮族侵入の激化、ペルシアの侵攻という問題に、ディオクレティアヌスは皇帝2人、副帝2人の四頭政で対処する。それぞれ撃退に成功し、一時的な平和を取り戻したが、軍事費の増大はローマの財政を大きく悪化させた。ディオクレティアヌスの引退後間もなく四頭政は崩壊、その後の混乱を収めたコンスタンティヌスが皇帝に即位し、ミラノ勅令という歴史の転換点となる勅令を出す。ローマは衰退しつつも、この2人の皇帝により1世紀以上延命される。しかし、その代償として「ローマらしさ」を殆ど失った。 2014/05/21
星落秋風五丈原
21
未曾有の混乱から帝国を立て直そうとした二人の皇帝、だが彼らの努力はローマから「ローマらしさ」を奪っていく??塩野版ローマ帝国衰亡史は佳境に!2005/01/15
ロビン
18
13巻はディオクレティアヌスと「大帝」コンスタンティヌスの治世が描かれる。目の前の問題に対処するために行われた数々の施策によってローマが徐々に非ローマ化していく。コンスタンティヌスは当時は少数派であったキリスト教の「絶対神」の権威に目をつけ、自分の権力を正当化するために「ミラノ勅令」にて公認を与えて利用するが、それはローマ世界を決定的に変質させ、時代は中世へと向かっていく。コンスタンティヌスが政局安定のためにここまでキリスト教を奨励したとは知らなかった(信仰より利益のために改宗する人が多かったという)。2022/09/25