内容説明
若いときから各地を放浪し、現実の社会と人間を見つめつづけた杜甫の詩は、古くから日本に紹介され、さまざまな影響を与えてきた。努力の人といわれる「詩聖・杜甫」の詩の世界は情熱と繊細さにあふれている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
28
『詩聖』杜甫の作品集。『詩仙』李白との違いを見つけられればと思いながら読んだけれど、漢詩初心者の私には違いが良く解らなかった、、、ただ、李白の詩の方が庶民の感覚に近い感じがした…かなぁ(^^; 韻を踏んだ文章は読んでいるだけで気持ちが良いし、漢字を眺めているとなんとなく伝わってくるものがある。和訳がないと読めない原文が横文字の詩と比べると得した気分になれるのがいいな(笑)2017/11/20
とんこつ
11
生涯に沿って各時代の作品を鑑賞し、解説するという入門書としてとても読みやすい1冊。その上で、どの作品も味わい深く、杜甫の世界観に浸りながら心地よく読み進めていった。盛唐の絶頂期から、安史の乱の不穏な時代を経験し、自身も幾度も不遇の時を過ごす。晩年にかけて作品が成熟していくさまはそのまま杜甫自身の成熟を見ているようだった。漢詩には、中国の大陸そのままのような無限大に広がる空間がある一方で、花びらの微かな変化にも気がつくような繊細さも存在していて、かの国の人間や人生を見る目の鋭さは侮れないと改めて思った。2021/07/02
Timothy
6
同シリーズの『李白』からあまり間を空けずに読んだ。こちらの方が楽しめたように思う。晩年に近づくと内面に目が向いて詩の深みが増したということだが、個人的には中期くらいまでの社会派らしい詩が面白かった。特に「石壕吏」は写実的で緊張感があり、五つずつ整然と並ぶ漢字と古文を前にしてこれほど手に汗握るような情景を見ることができるとはと驚かされた。「江南逢李亀年」は他の書籍で見て心に留まった詩だが、杜甫の作とは意識していなかった。本書を通し彼の半生を追った末の思わぬ再会で、何やら少し違って見えるような気がする。2021/03/06
れどれ
4
杜甫の生きざま、観想、詩への態度、こぼれ話いずれをとっても簡略かつ緊密に書き記してくれているはずなのに、いかんせんこちらの理解力が及ばないばかりにどのページも上滑りしていった。勉強する姿勢で臨めばまた違う読み方になるのかもしれない。2019/07/17
Mayuko
1
「荒城の月」の「春高楼の花の宴」という歌詞が、杜甫の詩の影響を受けているとは初めて知った。素読文化の江戸〜明治時代の人々は、今とは比べ物にならないほど漢詩に親しみ、かみくだいて自分のものとしていたのだと改めて思う。まさに日本流の文化の取り入れ方だが、漢詩が常識でなくなった今、それにとって替わり得ているものは果たしてあるのだろうか?2014/11/23