内容説明
宿敵・少正卯の誅殺に成功した孔子だったが、三桓家の策謀により、実権を持たない大司寇の位に祭り上げられ、魯の政権の中枢から遠ざけられてしまう。魯の改革に失敗した孔子は、己の無力さに失望し、「天命の求めるところ」を探すため、最愛の弟子・顔回らとともに魯の地を出て、放浪の旅に出ることを決意する。十年の歳月をかけて描き出した渾身の孔子伝、堂々完結の第十三巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もえたく
17
政治家孔子と異能者として支える愛弟子顔回を描く異色の中国歴史小説の第13巻。孔子は、魯の国で礼の政治を行う目的で、牛耳る三桓家の政治力を削ぐため謀略の誹りを受けても、三都毀壊まで実行した。にもかかわらず、斉国の媚女団の策略で朝廷や民まで骨抜きにされ、その始末の結果、魯を離れる決断を。13巻に渡り、全く新しい孔子像を魅せてもらいました。今なら『論語』を楽しんで読める気がします。2020/05/25
きいち
13
ああ、とうとう終わってしまった…なのにこの爽快感は何なのだろう、と思ったらそれはきっと、広げられたすべての風呂敷を丁寧に畳みきってくれたおかげ。一番の謎であった「顔回って孔子にとって何者なの?」の謎に答えるだけじゃなく、少正卯との対決、医鶃や冉伯牛といった魅力的なサブキャラたちの後始末、孔子出魯の経緯、顔回にとっての子蓉、そして妤…、きっと筆の欲望の赴くまま、どや!とばかりに片づけていってくれる。こんなスッキリはそうそうないや。◇孔子が「狂」で顔回が「娟」。小説が行った思考。2013/04/18
きさらぎ
6
読み切ってしまった…と思う小説は久しぶりだ。「顔回の死と孔子の慟哭」を書きたくて始められた物語は、13年近くを費やしてついにその場面に至ることなく(ひとまず)幕を下ろすことになった。そういう意味では惜しくもあるが、顔回が突き抜けすぎてしまったので、この先を書くのはいささか難しいだろうと思ってしまう。ラストの顔回と妤の場面は孔子も含めてとても美しかった。「回や」という呼びかけが優しくていい。礼の中に仁がある。その逆ではない。古代の具体的な場における礼について考える機会を与えてくれた貴重な小説でもあった。2018/10/01
Norico
3
ここで終わりなのか2017/05/14
hika
3
儒経の「儒」とはなんであったのか。その大上段のテーマを、顔回という異能者と孔子という狂者を軸に多彩で魅力的なキャラクターを配したエンターテイメントとして、語り尽くしていった。歴史と小説の語りの間にしか成立しない素晴らしい物語であったなあと。2015/02/14