内容説明
戦前・戦時下の日本の軍隊とスポーツの関係をめぐっては、これまで「日本軍がスポーツをするわけがない」「日本軍が民間のスポーツを弾圧した」という2つの神話が根強く信じられてきた。しかし、「神話」によって従来のスポーツ史と軍隊史、双方が見落としてきた空白が日本の近代史にはあるのではないか。
戦前・戦時下の海軍と陸軍のスポーツ評価や実際の取り組み、軍隊のスポーツ熱によって活性化した民間スポーツ界との交流・蜜月、陸軍による戦時下の弾圧の真相といった埋もれた事実を、多くの史料を渉猟して明らかにする。そして、欧米の軍隊でのスポーツの位置づけや、アメリカ軍の捕虜収容所でのスポーツの実態といった海外の事例とも比較して、日本の特異性を浮き彫りにする。
戦前から戦時下、敗戦へといたる過程で男性性(男らしさの価値観)や鍛錬・娯楽のバランス、そして皇室・軍隊・スポーツのトライアングルがどう変容したかを見定めて、軍隊とスポーツの新たな歴史を描き出す。
目次
序論
第1部 戦前の軍隊とスポーツ
第1章 海軍とスポーツ
1 海軍兵学校
2 海軍機関学校
3 艦隊
4 呉鎮守府
5 横須賀鎮守府
6 舞鶴鎮守府
7 佐世保鎮守府
8 海軍のスポーツ観
第2章 陸軍とスポーツ
1 体操とスポーツ
2 陸軍幼年学校
3 歩兵第三十九連隊
4 陸軍戸山学校
5 陸軍士官学校
6 陸軍スポーツの広がり
7 「偕行社記事」のスポーツ論争
8 陸軍のスポーツ観
第3章 デモクラシー時代の軍民関係
1 オリンピック
2 極東大会
3 明治神宮大会
4 デモクラシーと男性性
第4章 欧米の軍隊とスポーツ
1 イギリス軍とスポーツ
2 アメリカ軍とスポーツ
3 フランス軍とスポーツ
4 連合軍対抗競技会
5 ドイツ軍とスポーツ
6 捕虜収容所のスポーツ
第2部 戦時下の軍隊とスポーツ
第5章 海軍とスポーツ
1 国内
2 国外
3 体育方針
第6章 陸軍とスポーツ
1 反スポーツの底流
2 国外
3 国内
4 民間スポーツ界との関係
5 体育方針
6 スポーツの「弾圧」と男性性
第7章 軍隊とスポーツの日米比較
1 アメリカ軍とスポーツ
2 捕虜・占領・スポーツ
3 戦争のスポーツ化とスポーツの戦争化
4 軍隊と娯楽
あとがき
索引