精神病の日本近代 憑く心身から病む心身へ

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精神病の日本近代 憑く心身から病む心身へ

  • 著者名:兵頭晶子
  • 価格 ¥3,740(本体¥3,400)
  • 青弓社(2014/03発売)
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  • ISBN:9784787220325

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内容説明

いつから、私たちに狐は憑かなくなったのか。憑かれるという知覚を否定され、精神を病む経験を刻印された心身は、刑法三十九条を経て医療観察法に囚われていく。民俗や宗教から司法、社会事業までをも貫く人間像の転換を、近世から現代までの歴史事象をもとに明らかにして、その延長上にある現在を問い直す。
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目次

はじめに――ある忘却の歴史から

序章 「憑かない心身」からの問い
 1 精神病の日本近代
 2 狐憑きという視座
 3 「精神病とはそもそも何なのか」
 4 狐憑きが当たり前だった世界
 5 狐が神となる瞬間
 6 狐憑きが再定義されるということ
 7 「憑かない心身」の考古学へ

第1章 精神医学史はなぜ〈もの憑き〉を語るのか――憑く心身との邂逅
 1 精神病の歴史を書くということ
 2 金子準二の「日本精神病史」――「精神病観」と「怪異」
 3 呉秀三「磯辺偶渉」――神意の発現としての「怪異」
 4 「神意」から「心意」へ――精神病史の始点
 5 〈もの憑き〉という世界観

第2章 〈もの憑き〉は医の領域に属するか――日本近世の問い
 1 〈もの憑き〉という問題
 2 医事か否かという問い
 3 儒医という自己規定
 4 「淫祀」という認識の登場と、新たな対処法
 5 日本近世からの問い

第3章 〈もの憑き〉の再定義――病む心身が構築される過程
 1 近代精神病学の樹立と〈もの憑き〉
 2 〈もの憑き〉の現場から――〈繋がり〉の異変の修復
 3 精神病としての再定義――〈存在〉を病むということ
 4 〈もの憑き〉と近代社会――「個人」が形成される時代
 5 新たな心身への問い

第4章 〈もの憑き〉をめぐる世界観の剥奪――「憑物」問題の成立
 1 「憑物筋」と「患者筋」
 2 民間治療場をめぐって
 3 「精神病者」が見出される場所
 4 「患者筋」の発見
 5 定住社会への併呑と「憑物筋」
 6 民間治療場のゆくえ

第5章 憑く心身か、病む心身か――大本と「変態心理」の相剋
 1 〈もの憑き〉への存命の賭け
 2 民衆宗教の現場で
 3 心のありかをめぐって――精神の再定義と潜在意識
 4 「精神病」を癒すこと――精神治療の可能性
 5 心の内奥への眼差し――「変態心理」における潜在意識
 6 大本の憑霊をめぐる論争――潜在意識という論拠の変質
 7 大本の精神鑑定――責任能力と潜在意識
 8 不可視の異常へ

第6章 病む心身の主題化――新刑法と精神病者監護法・精神病院法
 1 犯罪と病む心身
 2 新たな責任概念と精神病学――〈存在〉に固定された危険性
 3 「中間者」概念の登場と精神病者監護法の変質
 4 入江事件の衝撃――精神病院法への前哨
 5 精神病院法をめぐる議論とその実施――司法の外での拘束
 6 「第二の入江三郎」の死――永続的な監禁の果てに
 7 〈存在〉を封じること

第7章 未然の危険をめぐって――社会問題の「予防」と病む心身
 1 「予防」という権力
 2 危険の予知
 3 危険を未然に防ぐこと――断種・新たな監獄・未発の病
 4 非監置病者の危険と収容――監護法を超えて
 5 監置の現場から――危険の「予防」と非監置病者の包囲網
 6 架空の危険と精神病

終章 精神病の日本近代
 1 〈もの憑き〉の世界観と憑く心身
 2 病む心身の再定義と「精神」の潮流
 3 〈存在〉の時間幅と病む心身の危険性
 4 民間治療場の近代
 5 医療観察法という結実
 6 医療観察法の問題点
 7 いま、精神病を語るために

あとがき

索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

田舎暮らしの渡り鳥

10
これは面白かった。知る人ぞ知る良書だなぁ。2021/11/06

やっぱ犬が好き♡

5
狐憑きが迷信として退けられ、精神病がそれに変わる正しい認識とされる過程は、規律権力によって近代的「個人」概念が日本に浸透していく時代にあった。特に興味深いのは、近代における司法・刑法の発展と同時に精神病概念は拡張されていき、犯罪・社会問題との親和性あるものとして精神病が語られていったという著者の指摘。社会的なものが個人化(個人によってコントロールさせる)され、問題を生み出す社会作用が不可視化されてしまう。2022/04/29

nanchara_dawn

2
前近代の日本においては、例えば「狐が憑く」というような、<もの憑き>の文化が当たり前にあったが、近代化と共にそれは「精神病」に置き換えられていった。<もの憑き>は地域共同体の問題として捉えられてきたが、精神病は「憑かれる」側である個人の問題とされ、その個人存在を危険視する視点から、過度な予防検束が行われたり、断種が検討されるなど、治療という名目の下で権力が暴走していたことが明らかになっていく。近代が生み出した架空ではなく、精神病患者の現実と向き合うべきだとする著者の主張には納得がいく。2012/09/29

Annabelle K

1
政治的意図が精神病の成立と排除にどれだけ貢献しているかに、驚いた。ミシェルフーコーの狂気の歴史と比較してみたい。2023/08/06

Was

1
言説分析によって、明治時代以降に<憑き物>(=世界との関わりの問題)から、精神病(=個人の内部の問題)へと社会の認識が変化したことが、近代日本における主体の形成(当然、法制度によるもの)と密接に関わっていることを手堅く解き明かす。そして、共同体を基盤にした近代以前の世界観が、オカルト的なものとして周縁におとしめられていくことも示唆されている。いい本だと思う。2012/09/19

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