内容説明
疫病を退散させる晴明の活躍を描く
不思議な童子の群が都にあらわれ、青疱瘡が広がる「野僮游光」、赤舞瘡から逃れようとする非情な左大臣を描く番外編「秘帖・陰陽師 赤死病の仮面」、蝉丸の悲恋が明かされる中編「蘇莫者」など全八話。物語の神に選ばれた作家は言う、「物語りは永遠に終らない」(「あとがき」より)。尽きぬ着想、広がる想像、大人気シリーズ第17巻。
※この電子書籍は2021年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
98
最新刊の陰陽師ですが単行本でも読んでいたので再読です。今回はコロナの現代を意識して、「野童游光」、「秘帖・陰陽師 赤死病の仮面」(番外編で身勝手な左大臣が主人公)で当時の流行病を書かれています。また今回は中編の「蘇莫者」で蝉丸の若かりし頃から現在までのはなしが語られています。それにしても晴明の相棒の博雅の笛の音は人の悪を失くしてしまうようですね。いつもながら楽しめました。2023/06/22
眠る山猫屋
68
今巻は博雅活躍巻。博雅の無私というか、“よい曲を奏でていたい”という気持ちだけしかない事が、まわりの人々や妖を、時に神仙さえも癒してしまう。誰かに褒めてもらいたい訳でも良き楽器を手にしたい訳でもない、ただその瞬間を、美しい音で満たしたいという博雅の願いは、きっと何かを超越しているのだろう。そしてそれを描く獏さんは凄い。『読人しらず』の太薫のような厄介者さえ慌てさせてしまう博雅の天賦の才、それを間近に感じている晴明の感嘆のため息が聞こえてくるようだ。2023/08/18
chiseiok
40
あれれ、予想外に良かったかも。IWGP同様ルーティン読みのつもりでしたが、断然こっちの方が濃かった面白かった。衣良さん済まんですw。何しろキャラのポテンシャルが高いので、物語舞台にぽんと出しただけで勝手に怖くて哀しくて面白いお話をつるつると紡いでくれる(…ように感じるけど、それだけ獏さんが手練ってことか)。今回イノセントツートップの泣き虫博雅と恋バナ蝉丸、究極のあざとツートップ道満と晴明、コントラスト最高です。さらに唐突に異世界に迷い込んだような不安感を感じさせるラス前のお話も秀逸。獏さん枯れてないです。2023/12/26
HMax
36
単行本で読んだと知らずに再読。博雅の笛に始まり笛に終わる一冊、博雅、恐るべし。 人でないことが分かっていても「私で力になってさしあげられることがありますか」と声をかけることが出来る博雅、そんな博雅が作った歌(らしい)「天の戸をおし明け方の月見れば憂き人しもぞ恋いしかりける」。歌を詠む歌うということは生きていることの証、今年も残りわずか、最後にゆこうゆこう、カラオケにいこう、そういうことになった。 来年もよろしくお願いいたします。2024/12/31
鷺@みんさー
36
読み応えあるなぁもう!文字数やページ数だけでいくとかなりさくっとした連作短編なはずなのに、満足感がえぐいわ。勿論『赤死病』も面白かったし、『蘇莫者』は、その語源の由来といい、物語の壮大さも、陰陽師あるあるな女の凄まじさも、そして舞の描写の美しさもうっとりだった。しかし全体的に、「博雅よい漢すぎるブヒー🐷💨」て感じです!(頭悪い系感想w) いや、昔はやはり晴明さまの綺羅綺羅しさにキュンでしたが、この歳になって読むと、博雅なんつーイケメソ。→2024/05/13