内容説明
炭のように真黒の兎が叫ぶ、「晴明を呼べ、呼ばねば喰い殺すぞ!」
おなじみの蘆屋道満や盲目の琵琶法師・蝉丸も登場する、大人気シリーズ第15弾!
蛇に噛まれてから夜にうなされるようになった渡辺元綱。
その声は、かつて元綱が殺した者たちの声であった。(「邪蛇狂い」)
藤原兼家が真っ黒な兎を捕らえた。
ところが、その毛は日に日に白い部分が増え、しかも凶暴になっていくという。
清明たちが月蝕の夜に訪ねてみると、籠の中に、兎が二本足で立っていた。(「嫦娥の瓶」)
月の美しい晩秋の夜、蘆屋道満がどこか淋しそうに一人で酒を飲んでいる。
そこに萱鼠(かやねずみ)や蟾蜍(ひきがえる)が出てきて、落葉の衣をまとって舞い始める。(「道満月下に独酌す」)
今宵も晴明と博雅が、平安の都の怪異に挑む!
※この電子書籍は2016年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
129
2年前にハードカバーで読んでいるのですがいつも通りに文庫版で再読です。印象は天候や月などに関するものが多く自然をより感じました。とくに木犀月という短編は百人一首でも有名な蝉丸法師と晴明、博雅の3人が月を鑑賞している話ですが、墨絵のイメージが出てきて高畑勲監督に短編の映画化でもしてもらいたい感じがしました。2019/06/20
眠る山猫屋
65
やはり、良い。邯鄲。草雲雀。松虫。鈴虫。なんて羅列を見つける度に、数十年変わらぬクオリティが甦るよう。変わってきたのは、やはり蘆屋道満。不敵な敵役が、いつの間にか想いを隠した照れ屋の良い漢になってきた。なんなら清明たちより素敵かも(笑)そんな道満の『道満月下に独酌す』がほんのり優しくて切ない。平安の闇は色々なものを隠してしまうから、すれ違ってしまった気持ちは更なる闇の奥に消えてしまう、そんな原点回帰の物語が多かったかな。2019/06/11
ちぐりん
56
「どうだ博雅、ゆくか」「う、うむ…」「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった――― このいつもの流れを見るだけで心が踊ります。玉兎ノ巻とあるように、月にまつわるお話の1冊でした。はるか太古の時から美しく満ち欠けを繰り返し、いつの時代も人間を魅了してやまない。人の心を惑わせ、癒す力もある月。 その月明かりのもとには、博雅の葉二と蝉丸の琵琶、四季折々の花が咲き、虫の声が聴こえる晴明の庭。 ひとつひとつのお話は、以前よりも怖さがなくなったような気がしますが、やっぱり大好きです。2019/08/10
そら
45
晴明と博雅の相変わらずの仲の良さ♡。盃の酒に映った月、梅の香り、木犀の香り、笛の音、、良きかな!(^^)!。ところで、道満がずいぶん性格まるくなってない?2021/10/22
HMax
43
博雅、やはり呪の使い手、知らぬ間に式神を作るだけではなく、清明でさえも救えない鬼を救う「輪潜り観音」。「嫦娥の瓶」、嫦娥4号が月の裏に着陸した際に嫦娥の説明を聞いたのを思い出しました。暖かくなってきた今日この頃、今年の夜桜見物は静かに物思いに耽りながら、月を映したお酒を楽しみたいものです(コロナのために嫌でも静かになりそうです)。ゆこう、ゆこう、花をみにゆこう。2020/03/16