内容説明
2013年に長野県の老人福祉施設「あずみの里」で、女性入所者がドーナツを食べた際に意識を失い約1カ月後に亡くなった。その後、おやつを提供した准看護師が業務上過失致死罪で起訴され一審で有罪となる。この判決は介護や医療の現場を萎縮させるものとして大きな波紋を呼び、2020年7月の控訴審では高裁が一審判決を破棄して無罪が確定した。
本書では、異例の刑事事件として扱われたその裁判を振り返り、ケアの現場におけるリスクとコミュニケーションのあり方、科学的根拠と法の関係について検証し、そこから「暮らしの中のケア」とはどういうものかを考えたい。
目次
裁判の経緯と焦点(編集部)
特養あずみの里裁判を振り返る──上野 格・宮子 あずさ
医療・介護事故における刑事弁護──水谷 渉
ケアの現場から考える「予見可能性」──鳥海 房枝
看護と介護のはざまで──工藤 うみ
ケアする者のつつしみ──上野 千鶴子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ただいま蔵書整理中の18歳女子大生そっくりおじさん・寺
72
「あずみの里」という老人施設で、おやつの時間に入所者が一人亡くなった。おやつのドーナツを喉に詰めて死んだという判断で、配った看護師が罪に問われた。しかし検証したところ、明らかに窒息はしていなかった。おやつを食べた際に体調に異常をきたして亡くなったのだ。裁判に裁判を重ね、この看護師さんが無実を勝ち取ったのは7年後。看護師さんのこの7年に思いを馳せると、他人事ながら泣きたくなる。しかし最初に「窒息」と判断したその時に、介護の現場の問題が凝縮しているのだ。薄いが隅々まで意義のあるブックレット。おすすめです。2021/06/03
ネギっ子gen
54
【暮らしの中に求められる、ケアの姿】2013年に長野県の特養「あずみの里」で、准看護師が女性入所者をドーナツの誤飲で窒息死させたとして、刑事事件に――。業務上過失致死罪で一審有罪。この判決は、介護や医療の現場を萎縮させるものとして大きな波紋を呼んだが、高裁は一審判決を破棄し無罪に。検察は上告を断念し、無罪が確定。裁判を振り返り、ケアの現場におけるリスクとコミュニケーションのあり方、科学的根拠と法の関係について検証し、ケアとはどういうものかを考えたブックレット。介護関係者やご家族には、ぜひ、読んでほしい。⇒2023/10/10