内容説明
昭和天皇は、その生涯に三度、焦土に立った。皇太子として訪れた欧州の、第一次世界大戦の激戦地。摂政として視察した関東大震災。東京大空襲で焦土と化した東京。こうした体験は、「戦争と平和」をめぐる天皇の観念に何を及ぼしたのか。激動する国際情勢のなかで、天皇はどのように戦争に関わり、歴史の「動力」となっていったのか。そして、「昭和の戦争」は、平成の天皇に何を残したのか。「象徴天皇の時代」を大幅に加筆!
目次
学術文庫版のまえがき
はじめに
序章 昭和天皇とその時代
第一章 大正期の政治と宮中の活性化
第二章 昭和の船出と激動する世界
第三章 内なる戦い
第四章 大陸と太平洋を敵として
終章 戦いすんで
補章 象徴天皇の昭和・平成
学術文庫版のあとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
84
昭和の歴史を辿ると悲惨な戦争の道へと突き進む姿に、どこかで立ち止まれなかったのかと、いつもながら暗い気持ちになってしまう。立憲制の君主であろうとした若き昭和天皇の葛藤と苦悩。明治の元勲が腐心した”無答責”の虚実。日中戦争への揺れ動く態度。そして最期まで対米英戦遂行能力に疑問を感じ(真っ当な情勢認識)ながら開戦を認めてしまう。多くの犠牲者に対し、やはり責任は免れないだろうが、占領軍の意向から退位の選択肢も塞がれてしまう。長い戦後の”象徴天皇”の立場をどう感じておられたのか?新たな史料や視点も多く、内容充実。2019/12/23
レアル
38
この時代の天皇史はどの天皇史を読んでも「戦争史」になる。明治に天皇の基礎作りが出来て、大正、昭和と時代が流れるが、この時代の流れの中で、日本は何を見てどこに向かおうとしていたのか!この本はその事が書かれてある。そしてタイトルにある昭和天皇。戦争下にある憲法と現憲法との中で悩まれた唯一の天皇。今までこの時代の天皇史は戦争史に視点を置く読み方をしていたが、この本で初めて天皇を主軸においた天皇史を読めた、そんな本だったように思える。2021/12/16
おさむ
33
先日、東大の天皇問題に関する公開講座がおもしろかったので、こちらを読了。題名の通り、昭和天皇と戦争はきっても切り離せなかったことを改めて実感。2018/09/21
わたなべよしお
14
やっぱり、近現代史は勉強しなければならないなぁ。当然、新しい知見(太平洋戦争の宣戦布告が遅れたのは在米日本大使館の不手際ではなかった)も得られる。勿論、この中身の濃い本を十全に理解したわけではない。だから、例えば、「憲法は米国の押し付けか」という問いそのものがほぼ意味をなさないことということなど、歴史が極めて複雑で、ある意味ドラマチックであることはよく分かった。2018/12/28
かんがく
9
大正〜平成の歴史を、幅広く、かつ天皇という軸からはブレずに記述した優れた通史。天皇と憲法の関係性に特に重点が置かれており、その対象は現上皇の退位問題まで至る。終戦か独立の時点で昭和天皇が譲位していれば、その後の歴史はどのように変わっていたのか気になる。2020/09/22