内容説明
三輪山の麓、大和に生まれた王権はどのように古代国家を形成したのか。古事記、日本書紀に描かれた神話の解読や考古学の最新成果などから、神武以降の天皇の実像を解明。群臣に擁立された天皇中心の畿内政権が、全国を統一していく過程を検証する。また東アジア情勢の緊張により、大化の改新が引き起こされ、律令国家形成が促進された背景も明らかに。天皇号と日本の国号の誕生も解析し、日本の歴史の原点を究明する。
目次
はじめに
序章 「天皇の歴史」のために
第一章 卑弥呼と倭の五王
第二章 『日本書紀』『古事記』の伝える天皇
第三章 大和朝廷と天皇号の成立
第四章 律令国家の形成と天皇制
終章 天皇の役割と「日本」
学術文庫版のあとがき
参考文献
年表
天皇系図
歴代天皇表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
49
談社学術文庫から出版されている事もあり構えて気合を入れて読んだが、古代史好きが講じた事もあり楽しく読了。でも次巻からはきっと四苦八苦しながら読む事になるはず!こちら伝承の神話の世界から律令制辺りまでの歴史に対する著者の検証と考察が書かれている。天皇の歴史を見れば日本の歴史が分かる。どの稿も楽しく読んだが、卑弥呼や邪馬台国、倭の五王などの日本(当時は倭)ではなく、中国や朝鮮側の史料による歴史考察が興味深かった。2021/10/04
Shoji
45
神武天皇から欠史八代、そして中央集権を成そうとするヤマト王権の時代を経て、律令性のもと国家の体が整い始める飛鳥時代までの天皇制の成り立ちについて書かれています。歴史時代以前のわが国の姿について、ある程度の知識を持った方でないと取っ付き難い本かもしれません。2019/11/12
∃.狂茶党
11
すでに、王権が動き出してからの記述しかなく、いかにして始まったかは推測でしかないが、多分世界中どこでも起きていたように、小さな集団が、ぶつかったり手を握ったりして、それらしきものが作られ、自己正当化の物語が編まれたのだろう。 かなり広範に検討されているのだが、専門的な話題も多く、かなり難しい本に思える。 情報量の多い文章が、わからないことをかたどっていく。 日本という国号が東の端を意味し、中華に阿るようなものであったとの考えは、非常に納得のいくもの。 小国のプライド防衛策なのかなと、おもったり。 2022/07/14
namakemono
3
今回の改元で、古代天皇関連の新書を何冊も読んだ後、仕上げ(?)に 本書を手に取った。叢書の中の一冊ということで、新書より網羅的でカッチリした書き方か。。資料の極端に少ない時代ながら、当初「大和王権を(精神的)上位におく同盟関係」と言う形で、出雲や吉備をはじめ、各地の「クニ」を従え、日本をファジーに統一した後、隋・唐の成立という外圧を契機に、実質的な支配に切り替えて行った様子が、ぼんやり読み取れる。2019/08/13
chang_ume
3
大化前代が内容の中心。三種の神器といったレガリア(宝器)や神祇祭祀、そしてもちろん王統譜の分析から、「王」と「大夫」「国造」たちからなる王権=「大和朝廷」の具体像が復元されました。考古資料が記述の主体かなとも予期しましたが、あくまで記紀を主に置いた史料からの解釈に徹しています。古代王権論といった趣きで「天皇の歴史」のテーマに不足なしですが、考古学からの成果援用が少ない記述にどこまで説得力を加えられるか、相当な困難も覚えたところ。2018/01/10