内容説明
地獄のインパール作戦遂行中、泥河(でいが)に呑まれる標耕平(しのぎこうへい)。サイパンは陥落し、フィリピン海戦では再起不能の惨敗と、日本の敗色は日に日に濃くなっていく。昭和20年8月、広島へ原爆が投下され、ソ連は参戦に踏み切って、怒涛のように満州に押し寄せた。伍代俊介はソ連国境の関東軍にいた。戦争文学の最高峰、ここに完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
21
戦争により財閥も縮小化し時代に翻弄される伍代一家。人間ドラマは勿論だが、いかに無益な無惨な戦いを強いられたかが語られた壮大なストーリー。後書きで著者の言わんとすることに同意する。勝てる見込みのない戦争に担ぎ出され尊い生命を失ったのは敗戦国だけでない。真っ当な指導者がいれば、助かった命がどれほどあったか。満州建国からノモンハン、ガダルカナル、インパール作戦 など愚かな戦争を知る物語であった。 2021/01/05
しんすけ
13
本巻の前半は1981年に三一新書から第17巻として出版された。 第16巻が1975年の出版だったから6年も間がある。 時間を要したのは五味川純平側の種々の事情だった。 一時は16巻で終わってしまうのではないかと思っていたが、やはりここまでか書かなければこの作品は完結しない。 そう思わせる内容の本巻である。 作家の執念が事情を超えてここまで書かせたことが、読むほどに心臓に跳ね返ってくる。 後半では七三一部隊が登場する。 そして明治天皇の孫にあたる竹田なる男が七三一に関わっていたことが明らかになる。 2019/08/21
がんぞ
4
あとがきに「書き始めたのは東京オリンピックの年…完結まで18年」三一新書18冊として逐次刊行され、途中、史料収集と膨大な註釈を担当していた澤地久枝氏は作家デビューして離れ「他のノンフィクションを書かねばならなかったこともありペースがいちじるしく落ちた」。「当初は東京裁判までを扱う予定であったが」「そこにどうしても出廷していて尋問を受け、判決を受けねばならぬはずの一人の人物が、法廷の埒外に置かれていてのうのうと暮らすことを許した裁判は、ほとんど無価値と思うようになった」。蒋介石トルーマン朝日新聞は裁かるべし2015/10/02
松本 類
0
俊介よ、死んではいけなかった。シベリア抑留されようとも、君は帰国して、戦犯を裁かなければならなかった。本日読み終えたのも、何かの縁だろう。2023/08/15
あっちゃんのパパ
0
評価=5:国を護るべき上位の人間が誰も自分の非を認めて責任を取らない日本は現在も変わっていないのではないか。再び戦争になった場合には、繰り返し日本国民を大量に無駄死にさせることになるのではないかと危惧してしまう。2023/01/23