内容説明
パビナール中毒、入院、心中未遂……。なお惑乱と絶望の時期は続く。やがて訪れる転機。時に太宰、三十歳。生への意欲が燃え、文学への情熱が湧き上がる。名作「富嶽百景」他の諸篇が書きつがれ、書下ろし創作集『愛と美について』が生まれる。創生期 喝采 二十世紀 旗手 あさましきもの 燈籠 満願 HUMANLOST 黄金風景 姥捨 富嶽百景 Icanspeak 女生徒 懶惰の歌留多 葉桜と魔笛 愛と美について(秋風記 新樹の言葉 花燭 愛と美について 火の鳥)[初版本併録]創生期 HUMANLOST
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
72
絶望の時期、文学への情熱を感じずにはいられません。多くの短編がそれを物語っていると思います。未発表の書き下ろし創作集が生まれたのも、太宰の文学への想いがあったからでしょう。2020/04/20
岡本正行
47
太宰治、なぜか大好きな作家、この物憂い、アンニュイな雰囲気が大好きなところが好き。まるで自分自身がこういう状況にありたいと思ているのを見透かされているようだ。そういう人は多いのではないか、しかも、この作家、これを書いた時期が、まだ30代後半なのだ、同じ人間、同じ書籍を愛する人間として、こんなに差があるのが恥かしい。そう言っても追いつくものではないし、これからも太宰を読んでいきたい。短編集ではある。長編も読むのに今期はいるが、短編は、もっともっと読みたいのが終るのが残念、それもいいんんだけど。2023/10/28
優希
44
薬物中毒の混乱から芸術と生活を取り戻そうとしているのが伺える時期の作品ばかりでした。少し前向きな空気感が漂っているように感じました。2023/04/30
ころこ
41
全集のよいところは、ほぼ発表順に読めることだ。『燈籠』太宰の持ち味になる女性の一人称の小説が一応、完成した作品。本作の前には太宰の一人称で構成も何もないような断片の、とはいえ言葉の並べ方の秀逸な作品が立て続けていたが、それらのマイナーチェンジとして女性の一人称が陽の目をみるに至ったことが分かる。『富嶽百景』富士と月見草のコントラストを、作家として身を建てていく遠大な野望と、現実には生活の立て直しからはじめなければならない卑小で不安な境遇を重ねている。気持ちは「選ばれてあることの、恍惚と不安と、二つわれにあ2023/03/24
Major
38
「ふと顔をあげると、すぐ眼のまえの小道を、簡単服を着た清潔な姿が、さっさっと飛ぶようにして歩いていった。白いパラソルをくるくるっとまわした」ーこんな健気な女性が太宰作品の中に描出されていたのか。なかなか他の太宰作品には見られない。3年の禁が解けて肺病の夫との接触が許された日。くるくるっと回したパラソルは、太宰25才の再生もしくは新生を志す心のスイッチでもあった。縁側でそのパラソルの女性を見守りながら言った医者の奥さんの言葉は太宰に向けられたものだったかもしれない。ー 「けさ、おゆるしが出たのよ」。 2024/11/09
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