内容説明
「私はこの短編集一冊のために、十箇年を棒に振った。まる十箇年、市民と同じさわやかな朝めしを食わなかった。……私はこの本一冊を創るためのみに生れた」(「もの思う葦」)。第一創作集『晩年』(昭和十一年刊)と、それにつづく“苦悩の時期”に書かれた諸篇を収める。晩年(葉思い出 魚服記 列車 地球図 猿ヶ島 雀こ 道化の華 猿面冠者 逆行 彼は昔の彼ならず ロマネスク 玩具 陰火 めくら草紙)ダス・ゲマイネ 雌に就いて 虚構の春 狂言の神
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
70
初期の創作集『晩年』と、続くように書かれた短編がおさめられています。『晩年』が10数年間かけて書かれたというだけで驚きでした。若干苦痛を感じますが、それを感じるのが太宰を読むということでしょう。引き込まれる何かがありました。2020/04/18
優希
46
初期に書かれた『晩年』と、続くように書かれた短編が収められています。短編集1冊のため、10年以上かけたというのに驚かされました。「苦悩の時代」に書かれた短編ばかりなので暗いのですが、自分の感情全てを表現しているように思えます。2023/04/30
ころこ
34
改題は各作品の事実のみ、新潮文庫のどこに収録されていたかが分かり、有難い。『道化の華』の冒頭は何度も読み返した文章で、読み返して以前の印象通りだったのは珍しい。メディウムとしての文章を意識しないものを書ける才能に溢れた人。「横で語り掛けている」という喩えが出来るかも知れない。険の無い文章の秘訣は「、」を含めた一種の間なのではあるが…『逆行』試験に臨み「あから顔の教授が、ふくらんだ鞄をぶらさげてあたふたと試験会場へ駈け込んで来た。この男は、日本一のフランス文学者である。われは、きょうはじめて、この男を見た。2023/03/22
白義
25
太宰は自覚の人である。もっと言えば、自覚を制御できない人である。自意識の強さとは、そのまま他者意識の強さである以上、過剰な自意識はそのまま主体性の欠落も意味する。「道化の華」では作者自身の分身のような主人公の心中失敗後の一幕を、これまた作者自身のメタ的な解説、弁明、自己批判が次々重なっていく自己言及の極みのような作品。ほとんどの作品が作家自身の肥大した自我を自己暴露する作品で、さらにはその暴露の情けなさを徹底的に自覚して無限後退していくかのような出口のなさが特徴的2014/01/16
岡本 正行
22
太宰治らしい小説、短編なかには長いのもある。読み物として、面白いのもある。小説に感動するとか、為になったという年齢ではなくなった。単純に面白い読み物であったと感じる程度でいい。フィクションとは、そういうものだろう。感動がないわけじゃない。それだけの時間を充てて、よかったかどうか。この太宰の全集物にも、そういうものあった。なんとなく、太宰には、自分と共通する考え方がある。ただ、この全集のほとんどが若い頃の内容、今の自分の年齢とかけ離れているのがひっかかる。誰しも年齢がいくと、考え方や物の見方も変わる。2023/09/08
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