内容説明
昭和21年11月、太宰は三鷹の旧居に帰ってきた。当時ジャーナリズムは、未曽有の賑わいを呈していた。太宰はジャーナリズムの寵児として華やかな脚光を浴びたが、けっして濫作はしなかった。1日の執筆量はほぼ5枚、ひとつひとつの作品に精魂を打ち込み、太宰文学を代表する幾多の名作がこの時期に生まれた。母 父 女神 フォスフォレッスセンス 朝 斜陽 おさん 犯人 饗応夫人 酒の追憶 美男子と煙草 眉山 女類 渡り鳥 桜桃 家庭の幸福 人間失格 グッド・バイ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
74
太宰の名作揃いですね。ジャーナリズムの脚光をあびていたのも頷けます。特に『人間失格』は個人的に好きな作品なので、物語に入り込んでしまいました。『斜陽』が収録されているのも贅沢ですし。ユーモアを感じさせる『グッド・バイ』が絶筆なので、完成していたらどのような作品になっていたか、気になって仕方ありません。2020/05/14
レアル
61
太宰最期の39歳の作品。「斜陽」「人間失格」そして太宰の心中によって未完に終わった「グッド・バイ」などが続く。「晩年」という処女作品があるからややこしいが、まさに晩年に書かれた作品で「人生悶々としている」といった作品が多く、ラストの「グッド・バイ」が比較的明るい話の中で未完で終わる!というのも、結果的に太宰らしいのかもしれない。。全集も残り1巻。2016/02/27
優希
51
この巻が1番好きです。『斜陽』『人間失格』という特に好きな2作品がおさめられているからですけれど。他にも名作揃いで、ジャーナリズムの寵児として称されていたのも納得です。『グッド・バイ』が未完なので、書き上げていたらどのような作品になっていたかが気になります。2023/04/30
ころこ
41
『斜陽』父(国家)亡き後に残された人々の物語。「死んで行くひとは美しい。生きるという事。生き残るという事。それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしい事のような気もする。」『金閣寺』のラストを思い起こさせる、このセリフから想像するのは三島由紀夫だ。三島なら没落貴族を描きそうだし、太宰がネガならば三島がポジであり、それ故に太宰は好かれ、三島は嫌われる。共通点は、どちらも愛されているということだ。『人間失格』直接は見えない。写真を見て、初めて自分が見える。冒頭、写真3枚が象徴的だ。他人が分からないとい2023/05/13
テツ
15
『斜陽』『人間失格』『グッド・バイ』 自堕落な人生。救いようのないどうしようもない私という存在。悩み苦しみそれでも生きることについての言い訳と自己嫌悪の展覧会。自分はここまで酷くはないし社会に適応は出来ているけれど何度読んでも居た堪れなくなるのは自分の救いようのない箇所(あちこちに山ほどあるが)を刺激されまくるからなんだろう。激しく痛むのではなく疼くような感覚が絶えることなく押し寄せてくる。なるほどこの疼きを延々と感じていたのなら酒の力を借りて生命ごと断ち切りたくもなるのかもしれない。2016/09/27