内容説明
敷島兄弟は通化の地に集う。苦い再会だった――。満州国はわずか十三年で理想の欠片(かけら)さえ失い、重い鉄鎖と化した。昭和二十年八月九日、ソ連軍が遂に侵攻を開始する。轟音とともに崩壊してゆく「王道楽土」。男たちは吹きすさぶ風の中で自らの運命と対峙する。日本そして満州、二つの帝国が破れ、残ったものとは何か。船戸与一が最期の炎を燃やし描き切った大叙事詩、ここに完結。(解説・井家上隆幸)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
64
船戸与一の最後の作品を読み終わって彼が残したかった物は歴史は現実の中の虚無であって、無慈悲な現実なのだろう。敷島四兄弟を軸に維新を経て第二次世界戦争終結までを書き連ねた小説だ。史実の登場人物には忠実に検証をしながら進行していた、戦争に勝ち負けは必ずあるが敗けを何処で察知しそれをいかに治める能力が必要だ、日本の悲劇は植民地化を避けることに必死になり隣国を植民地にし民族共和を試み邁進したことに遠因しているのだろう。一番ひ弱であった四郎が生き残り戦後をどう生きたのかそして復興していく日本をどう視るのだろう。2022/09/18
ヨーイチ
38
これにて全九巻読了。長かったぁ。結局、四人兄弟の見聞きした範囲で昭和初期から終戦後までの、満州国に重点をおいた政治、外交、軍事を網羅した「小説」であった。巻末の資料の量に圧倒される。結局少々本を読んでも「群盲が象を撫でてる」くらいしか消化し切れない歴史の重みと深みに目が眩みそう。日本の敗戦が見えてきた頃から社会主義陣営の攻勢が目立ってくる。ここまで来ると東西陣営の対立、二つの中国、韓国分断などの諸問題が同じムーヴメントで起きた事が分かる。ソビエトが中共が「凌ぎに凌いで」勝利を収めたって事実は 続く2017/02/28
kinnov
26
満州国興亡。読後に残ったのは、深い虚無と寂寥だ。敷島四兄弟と間垣が象徴する誰もが、歴史の流れには逆らえず、無力に堕ちていく。敗戦を迎えた四男にすら救いや希望が与えられない。長大な物語の影に流れている、明治維新以降の薩長を中心とした日本の在り方、為政者や軍人、市井の日本人の在り方への、静かに冷たい視線は今に通じるが、会津の復讐者すら取り込まれ無様に消えていく様を見せつけられれば、救いや希望をこの先に見出す事が難しい。自虐史観に陥らず、昭和前期を圧倒的な小説としてまとめこの世を去った著者に改めて感服する。2017/02/13
ちゃま坊
22
先の大戦を満州国からの視点で描いた本シリーズ。敷島四兄弟が主要な事件の目撃者として語られていく。現代では資本を投下し収穫する競争だが、当時は軍事力で植民地を増やして略奪する競争だった。これによってどれほど多くの人命が失われていったか。明治維新から始まった日本軍が消滅する最後の20年。繰り返してはいけない暗黒の歴史を学べた。全巻通して★★★ 作者は山口出身だったのか。長州、吉田松陰、陸軍、植民地というキーワードから満州国には縁があるのだろう。2018/02/04
ロデタ
20
全九巻読了。原爆を落とされ、ポツダム宣言を受諾し無条件降伏へ。負けを認めるのが遅い。戦争は何も良いことがない。ただの殺し合い。悲惨。2021/12/19