内容説明
満州国国務院へ出向した敷島太郎。抗日ゲリラの殲滅を続ける次郎。三郎は関東軍が細菌戦を準備していることを知り、四郎は謎めく麗人に心を乱される。岸信介ら新官僚の到来と大移民計画に沸く満州。その南、中国では軍人たちが功を急ぎ、兵を突き進ませてゆく。昭和十二年、日中は全面対決へ。戦火は上海から南京へ燃え広がる。敷島兄弟が目撃したこの世の地獄とは。戦慄の第五巻。(解説・西木正明)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
36
マラソンに例えると折返し、軍がとった愚行それに何も疑わず増長する民衆、欧州各国の思惑や中国共産党の台頭により泥沼化とした政治家は無力化しそれに贖うと粛正され日本の行く末に悪夢しかない、南京事件の悲惨な軍の行為は目に余る、敷島4兄弟により語られる中国内での日本人や中国人、朝鮮人が鮮烈に描かれている、船戸の戦争小説は今後日本が近隣諸国にどう接するかを深く考えざる負えない。2020/07/20
ヨーイチ
31
この回、前半は次郎が馬賊から足を洗う。最後の大仕事で猪八戒を失い、負傷。弟に頼んで洋服を誂え、拳銃を譲渡。そして、なんとルノーを購入。自動車屋に運転の仕方を教えて呉れる人を頼むというかなり牧歌的な話も。アイパッチの兄さんは満州の荒野で車を駆るつもりなのか。後半は上海事変から南京陥落。大事件なので作者は三郎と四郎を立ち会わせている。「帝国陸軍による虐殺、凌辱」が克明に描かれる。正規の近代軍隊による暴走(21世紀になっても尾を引くほどの規模の)の経過、理由も作者は述べている。続く2016/02/28
kinnov
21
唯一心を許せる友を失った次郎の喪失感が、心に染みる。物語は、盧溝橋事件から南京占領へと日支全面戦争の道を進んでいく。とても重い一冊だった。戦勝国側の倫理観や政治的理由に基づいた価値観で、軍部の暴走や残虐性を指摘し責任を押し付け、巻き込まれた市民という体で無責任に嘆くのは容易いが、彼らの行動を後ろから支援し煽っていたのは、目先の利益や感情だけで、深く考える事無しに反応していた一人ひとりの日本人だ。右も左も貧富も関係がない。今も同じ状況は続いている。100万人の提灯行列が薄ら寒い。そこに加わらない自信はない。2017/01/18
Masakazu Fujino
10
いよいよ、日中全面戦争に!第二次上海事変から南京攻略での捕虜・一般人民虐殺について、資料を使い、きちんと記述してあり、なぜ虐殺が起こったかを冷静に考えさせる記述となっている。いよいよ後半へ。2019/06/20
浦
10
4兄弟がなぜ、この小説の主人公であるかがよく分かった巻。4人の別の眼から描くことが、どうしても必要だったのだ。2019/05/18
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