内容説明
昭和七年三月、満州国建国。面積約百三十万km2、人口約三千四百万、新京を国都とし、最後の皇帝溥儀(ふぎ)を執政に迎えた。国の建設に胸を躍らせる太郎。金銭で請け負った荒仕事をこなす次郎。「憲兵隊の誇り」と称えられ、妻をも得た三郎。さらなる罪を犯し、大陸を流浪する四郎。日本人は新天地にどのような夢を託したのか。産声を上げたばかりの国家の実相、そして熱河侵攻を描く、第三巻。(解説・北方謙三)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
39
満州国建国後、敷島兄弟の立ち位置が徐々に浮き上がるそして間垣徳蔵の暗躍により関東軍の暴走が出始め泥沼に突入する、満州で起きた事件は詳細は知らなかったし日本人がしてきた過酷なしうちは目にも余る、次郎の決然とした態度は日本人の誇りである、今後の4兄弟の先行きには気になる末弟の四郎は心配であり、操り人形に成り果て命を落とさないで欲しい。2020/03/18
マムみかん(*ほぼ一言感想*)
29
第三巻。 満州国建国から国際連盟脱退まで。 国造りにロマンを感じ始めた太郎、国家や民族に捕らわれることなく自由に生きようとする次郎、純粋な気持ちで任務を遂行する三郎、ますます泥沼にはまっていく四郎…。 この辺りの歴史は授業ではほとんど習わないので、小説とは言え勉強になり、興味深く読めますね。 でも、他国への侵略、軍部の横暴等の描写は辛い~! ラストの悲劇は、満州国のこれからを暗示しているようでした☆2016/01/30
ヨーイチ
24
長い長いと愚痴りたくなる。こんなに長いのは、北方の水滸伝以来であろうか。独特の古い言葉と登場人物が思い出せないままに、気がつくと惰性で読み進めている。読みたいと思っていた題材で色々と面白い描写も有るのだが、ここまでの印象は単調の一言。結局は歴史の年表の記載事項毎に各主人公が遭遇して行く事の繰り返しなのだと気が付いた。但し、その追い方は全く律儀で「余す所なく」出来事の記述が延々とつづく。読み終わったら、「満州国」の全体像の様なものが形成されているかもしれない。続く2016/02/16
kinnov
18
『国家を創りあげるのは男の最高の浪漫だ』の台詞に全てが表われている一巻。浪漫は人を熱くさせ、狂わせ、理想を語らせ、醜悪な欲望をたぎらせ、本性を顕にする。その瞬間に立ち会えていたら、長男太郎のようにいつの間にか浪漫の虜に間違いなくなっていただろう。成り立ちが謀略に塗れたものだとしても。当時市井の庶民だったとして、未曾有の不景気の中、満州の可能性に胸を熱くせずに、『理性的に』その欺瞞を指摘できたとは思えない。さらりと語られる内地の市民の反応こそが、突きつけられる現実だ。今を呑気に生きる私に批判なんてできない。2017/01/05
多喜夢
12
子どもの頃、満州で作られた銅貨を持っており、それは今はない国のお金だよと聞かされていた。そんな思い出もあり、満州という国には郷愁もあったのだが、実はまさに日本がでっち上げた国家であり、そのためにアヘンまで扱われていたという事実を知った。満州という国はやがて消滅することは、皆知っていることだが、敷島4兄弟の行く末はどうなるのか。暗雲が垂れ込めるラストだった。2020/01/08