内容説明
はるかな未来、150万年のあいだ意思疎通を拒んでいた孤高世界から、融合世界に住むラケシュのもとに、使者がやってきた。衝突事象によると思われる惑星の地殻の破片が発見され、未知のDNA基盤の生命が存在する可能性があるというのだ。その生命体を探しだそうと考えたラケシュは、友人パランザムとともに銀河系中心部をめざす! 周囲を岩に囲まれ、“白熱光”からの熱く肥沃な風が吹きこむ世界“スプリンター”の農場で働くロイ―彼女は、トンネルで出会った老人ザックから奇妙な地図を見せられ、思いもよらない提案をもちかけられるが…
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
91
ほぼほぼ世界は知り尽くされて、寿命すらミレニアム単位で刻まれていく時代に物足りない思いで生きてきた語り手にある日訪れた未知なる探求への誘い、フォワードの『竜の卵』を彷彿とさせる自分達が住む世界を知ることのない閉ざされた世界に生きる者達の科学的考察の過程と発見!その二つが見事な対比を織り成す純正ハードエスエフ!二つの世界の遭遇と、その実二つの物語に於いての擦れ違いが強い印象を与える。2018/01/12
GaGa
47
これはある意味凄い。まず奇数章と偶数章で話が全く違う。実際に厚みがあるのは偶数章で、これだけで単独の作品として成り立つぐらいのクオリティがある。この作者は二次元的なレベルの追求がテーマなのか、その掘り下げのバイタリティは素晴らしいものがあり、その観点から言うと奇数章もまた一つの小説として完成されている。とにかく凄いの一言。2014/03/14
拓也 ◆mOrYeBoQbw
24
ハードSF長篇。奇数章の遠宇宙でメッセージを受け取ったラケシュの探索劇と、偶数章の”スプリンター”で”白熱光”を頼りに暮すロイの探索劇が交互に描かれていきます。特に後者は足し算から始まり、ニュートン物理、アインシュタインの一般相対論、そしてその先に予想されるペンローズ・プロセスまで読者も学んでいく形式。私の様に非ユークリッド幾何が専門だと楽に読めると思いますが、一般には複雑な幾何パズルに見えると思います。是非何度もトライして、物語もSF部分も読み解いてみてください(・ω・)ノシ2016/02/21
みみずく
23
物理も勉強していない文系の自分にはなかなか難しい内容で読了できてよかった、というずい分低い水準なのがなんとも情けない…。ただ内容が難しくてもロイたちが考えを出し合い、知識をまとめ上げていく喜びを一緒に感じることができたのが嬉しかった。あと、登場する(人)物たちの身体の形が特徴的で、どんな姿なのかな、と想像しながら読むのも楽しかった。2015/05/24
34
22
地球とはずいぶん重力環境のちがった謎の星系で、奇妙な形態の異星人たちが一歩ずつ物理法則を発見してゆく偶数章は、ある種の推理小説のようにも読めて非常におもしろい。つまりその世界がどうなっているのかを、読者も異星人と一緒に考えてみようという趣向なわけだ(しかし通常の推理小説の登場人物が、読者よりたいてい「少しだけ頭がわるい」のとはちがって、この異星人たちはべらぼうに頭がいいのだが)。ぼくは少なくとも三度は、「あれれ、おかしいですね、あれれ?」と俗に言う加藤一二三状態に陥ったことを告白しておこう。2017/05/15