内容説明
おかっぱ頭の少女チイは、じつは男の子。大道芸人の両親と各地を踊ってまわるうちに、大人たちのインチキを見破り、炭田の利権をめぐる抗争でも大活躍。体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを熱く描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナマアタタカイカタタタキキ
77
これは痛快!どうやら未完のようで、そこだけは悔やまれるが、それでも充分に面白い。裏表紙にある紹介文の情報量が多くて、どんな話か見当が付かないまま読み始めたけれど、解説にもある通り、夢Qにもかかわらず推理小説でも怪奇小説でもないとは驚き。そして純文学でもない。けれど冒頭から惹き込まれる博士の独白シーン、“幻術的”とでも形容したくなるこの独自性、ここだけ抜き出しても誰の作品か一目瞭然なあたりは流石である。昭和金融恐慌から始まるような暗い時代に書かれながら、天真爛漫なチイの愛らしさに、笑いなしには読めなかった。2021/07/13
鱒子
71
犬神博士と呼ばれる変人が、自己の幼少期を振り返る作品。ええっここで終わるの?という尻切れとんぼな感じです。福岡県の古い町並みが描写されており、地元民として面白いです(それでも古い方言は読みにくかった)。「ドグラマグラ」という言葉が数回出てきているのが、興味深いです。2019/10/18
keroppi
60
夢野久作は大好きな作家なのだが、何故かこの本は初めて読んだ。タイトルからSFチックな想像をしてしまっていたからかもしれない。想像とは全然違い、体制に抵抗する民衆のエネルギーを描いた傑作だった。とにかくこの躍動的な文体と描かれる映像的な人間たちのパワーに酔いしれた。美少年チイも魅力的。もっと続きが読みたかった。私が読んだ本はカバーイラストが米倉斉加年で、このイラストもいいんだが、読書メーターの書影が違っていて残念。2025/08/22
優希
48
面白かったです。未完の作品のようですが、それでも十分物語を堪能できました。夢野久作の持ち味である作風ではないのが気になりましたが、読んでいくうちに世界に没頭してしまいました。2022/03/04
そら
40
文豪作品は難解で読みにくいと思ってますが、これはとっても読みやすかったです。そして意外と面白い、魅力的♡っていうか私好み( *´艸`)。この独特のセリフの言い方は最初、ギョッとしましたが、これはこれで味があって小気味いいです。(感嘆詞や笑い声がやたら多くて、そこがカタカナという。。ヒエー、とか、イヒヒヒヒ、とか)明治時代。主人公は7、8歳の美少年。女の子の格好をさせられ、両親(らしき?)と3人で大道芸人として放浪している。からの〰、ドタバタ、ワチャワチャ、活劇風に展開していきます。2019/09/23