内容説明
≪「文豪ストレイドッグス」アニメコラボカバー版!≫
没落貴族のかず子は、華麗に滅ぶべく道ならぬ恋に溺れていく。最後の貴婦人である母と、麻薬に溺れ破滅する弟・直治、無頼な生活を送る小説家・上原。戦後の混乱の中を生きる4人の滅びの美を描く。
<「文豪ストレイドッグス」シリーズとは!?>
中島 敦、太宰 治、芥川龍之介、与謝野晶子、泉鏡花、F・スコット・フィッツジェラルドなど国内外の文豪のイメージをモデルに擬人化されたキャラクターが、「人間失格」「羅生門」などといった各文豪に関連する異能力を用いて戦うバトルアクションコミックス。
舞台は横浜。孤児院を追われた主人公・中島 敦は、とある自殺志願の男・太宰 治を助けたことから、異能力集団「武装探偵社」に所属することに。やがて、ポートマフィアの芥川龍之介らや、北米の異能力集団・組合(ギルド)との対決が激化していく――!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
104
角川文庫で再読です。堕落と滅びの美しさがまぶしく感じられました。傾き始めた人生は、転落しか道はないのですが、そこに繊細で儚さを乗せてくることで見える風景はまさに輝いていました。堕ちていくことは物哀しいことかもしれませんが、いつかまたやがて新たな道へと歩み出すことを信じるしかないのです。2018/01/14
扉のこちら側
93
2018年240冊め。初読は小学生の頃。何度か再読してみると、繊細は母親の、しかし弱さを子どもの前では表さない姿が好ましく思える。戦地から帰ってくる弟に対して、母に向かって投げかける言葉等、母娘関係に注目した。いつかまた再読しよう。2018/06/30
aquamarine
90
ただ生きる。それだけのことがこんなにも難しい。どれほど前途が絶望的でも毅然と美しい所作でスウプを飲む最後の貴婦人、母。麻薬に溺れて落ちていく弟。もがいてもがいて刹那的に生きるのか、毅然と前を向いて生きるのか、あるいは生きることをやめてしまうのか。革命を起こそうとするかず子が愛しい。最後には背筋をピンと伸ばし毅然と立つ彼女が見えました。これを書いた一年後に太宰がとった行動を思い、男たちの生き様だけが印象的でしたが、今回かず子に思いを乗せられたのが自分ではとても嬉しいです。桜桃忌に。2019/06/19
優希
82
堕落と滅びの美しさが語られていると思いました。美しい作法でスウプを飲む母、麻薬に溺れる弟。もがきながら生きるのか、先を信じて生きるのか、生きるのをやめるのか。かず子が革命を起こそうとしているようで愛おしかったです。2019/08/14
みっぴー
64
過ぎ去りし栄華、滅び行く一家にスポットを当てた言わずと知れた太宰治の代表作です。終戦後、一家の主を失い徐々に没落していく元華族。屋敷を売り、田舎に引っ越し食うのにも困る生活。母の病に麻薬中毒の弟…出口の無い闇の中であがきつづけるかず子と、最期まで貴婦人として生きた母の対照的な姿が実に印象的でした。母の死は、女は今までのように家に閉じ籠ってばかりでは生きていけない、かず子のようでなくては戦後を生き抜くことはできない。そういったメッセージを感じ取れました。気高さと泥臭さが同居する傑作です。2016/07/01