ちくま新書<br> 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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ちくま新書
世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

  • ISBN:9784480072979

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内容説明

一九世紀は哲学的には、社会の支配に対する人間の自由をどのように確保するかが模索された時代であった。思想的な旧制度からの自らの解放を求めた自由の哲学は、世界的なうねりとなり、異文化への対抗、伝統的な桎梏からの離脱などを目指して展開された。ドイツとフランス、イギリスとアメリカ、インドと日本などの地域に目を配りながら、そのうねりを作り出したさまざまな要素に改めて光を当て、近代から現代への移行期における、自由の意味についての哲学的探究を俯瞰する。

目次

はじめに 伊藤邦武
第1章 理性と自由 伊藤邦武
1 はじめに
自由の二つの意味
一九世紀の自由論
第三の自由論
2 理性のロマン主義
ロマン主義とは何か
ロマン主義と自然主義
ヘーゲルの歴史観
そのロマン主義的性格
3 進化と淘汰
ダーウィンの進化論
経済学の思想
4 第三の道
決定論的自然観の否定
自己形成という自由
この思想の世界的拡がり
第2章 ドイツの国家意識 中川明才
1 フランス革命とナポレオン
自由の哲学とドイツ・ロマン主義
『アテネーウム』から東洋学へ
ナポレオンと哲学
ヘーゲルとフィヒテ
2 カントとフランス革命
革命の拒絶
根源的契約と共和制
3 フィヒテの政治哲学
カント批判と革命権
理性による感性の統御
自我の解放へ
自由な存在者同士の相互承認
道徳性の原理
第3章 西洋批判の哲学 竹内綱史
1 西洋哲学の転回点
哲学のアイデンティティ・クライシス
この世は生きるに値するのか
西洋批判の哲学──ショーペンハウアーとニーチェ
2 ショーペンハウアー
「世界は私の表象である」
身体と意志
同情(共苦)の倫理学
意志の否定
3 ニーチェ
「神は死んだ」
同情(共苦)道徳批判
永遠回帰
一つのエピソード──日本とのつながり
第4章 マルクスの資本主義批判 佐々木隆治
1 マルクスと「マルクス主義」
近代の解放思想としての共産主義
ヘーゲルの歴史哲学とマルクスの唯物史観
近代化イデオロギーとしての「マルクス主義」
2 哲学批判
エンゲルスによる「哲学」化
青年ヘーゲル派とマルクス
「新しい唯物論」へ
批判的思考としての「哲学」
3 経済学批判
経済的形態規定の支配
「マルクス経済学」
物質代謝論と晩期マルクスの思想
第5章 進化論と功利主義の道徳論 神崎宣次
1 人間の由来、道徳の起源
ダーウィンの進化論と道徳の起源
功利主義と直観主義
生き残ってきた思想としての功利主義
2 ベンサムの功利主義
ジェレミー・ベンサム
功利性の原理
対立する原理の反駁
功利計算の手続
3 ミルの功利主義
ジョン・スチュアート・ミル
ミルから見たベンサム
『功利主義』における議論
4 おわりに
第6章 数学と論理学の革命 原田雅樹
1 はじめに
数学と哲学
一九世紀の数学
2 カントからフィヒテへ
カントの数学論
フィヒテの『全知識学の基礎』
3 代数方程式論からガロア理論へ
ラグランジュからガウス、アーベルを経てガロアへ
ガロア理論が成立するまでの方法的変遷
4 ガロア理論と群論の、関数論や幾何学、微分方程式論への拡がり
リーマン面の導入
デデキントによる代数関数論と代数学の抽象化
エルランゲン・プログラムとリー群の誕生
5 おわりに
一九世紀数学とは何であったのか
第7章 「新世界」という自己意識 小川仁志
1 プラグマティズムとは何か
新世界アメリカで誕生した哲学
プラグマティズムの歴史
従来の旧世界の哲学との違い
2 パース
プラグマティズムの父
プラグマティックな格率
3 ジェイムズ
有用性としての真理
純粋経験
4 デューイ
プラグマティズムの実践
問題解決
5 進化し続けるプラグマティズム
ネオ・プラグマティズム
ニュー・プラグマティズム
第8章 スピリチュアリスムの変遷 三宅岳史
1 スピリチュアリスムの歴史的背景
フランス革命が残したもの
「スピリチュアリスム」という語をめぐって
科学と宗教のはざまで
カント哲学との距離
2 メーヌ・ド・ビラン
観念学(イデオロジー)や生物学の影響
自我の意志と身体の抵抗
心理学から形而上学へ
3 クザン
王政復古と七月王政──フランスの立憲王政
出発点としての心理学
非人称的な理性の自発性
教育の非宗教的政策の推進と講壇哲学の形成
4 ラヴェッソン
転換期としての第二共和政および第二帝政──台頭する物質主義
スピリチュアリスムの世代交代?
習慣と非反省的自発性
「スピリチュアリスム的実証主義」に込められたもの
5 ベルクソン
第三共和政──二つのフランスの対立から安定へ
時間と自由
自然の持続化
生命としての持続
ひとつの問題の終わりと始まり
結び
第9章 近代インドの普遍思想 冨澤かな
1 「近代」とインド、そして「宗教」
インドの近代とは何か
近代批判と近代的宗教概念批判のジレンマ
2 スピリチュアリティとセキュラリズム
スピリチュアルでセキュラーな国
ヴィヴェーカーナンダの「スピリチュアリティ」利用を探る
インドの「スピリチュアリティ」を数える
欧米の「スピリチュアリティ」を数える
3 ブラーフマ・サマージの系譜──普遍と固有の希求とその焦点
ラームモーハン・ローイとブラーフマ・サマージ
「マハリシ」デーヴェーンドラナート・タゴール
ケーシャブ・チャンドラ・セーンの変遷
4 近代インドに空く〈穴〉──ラーマクリシュナと神
ベンガル知識人とラーマクリシュナ
インド近代思想におけるラーマクリシュナと神
第10章 「文明」と近代日本 苅部 直
1 「文明開化」のゆくえ
シヴィライゼイションと「文明」
進歩の意識
「文明開化」の進行
「文明」に対する疑い
「文化」の礼賛
昭和の「文明」批判
2 西洋中心主義をこえるもの
「文明」を喜ぶ庶民
伝統思想から見た「文明」
「文明」の道徳性
3 一九世紀の多面性
世界史の哲学
戦後における対決
【コラム1】カントからヘーゲルへ 大河内泰樹
【コラム2】シェリングの積極哲学の新しさ 山脇雅夫
【コラム3】スペンサーと社会進化論 横山輝雄
【コラム4】一九世紀ロシアと同苦の感性 谷 寿美
あとがき 伊藤邦武
編・執筆者紹介
年表
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

65
ショーペンハウアー(ハウエル)のペシミスティックさに震え、功利主義のしっかりとした意味を知り、プラグマティズムの概説書をもう少し読んでおきたいと思えた巻。西洋以外では、インド哲学と「文明開化」期の日本を紹介している。2020/10/17

壱萬弐仟縁

27
第三の自由論:自発性の自由、任意性の自由の他、自己制御を通じた自己形成という自由(019頁)。カーライル『衣服哲学』岩波文庫、1946年 (040頁)で苦労した話は、拙動画にあるので、ご笑覧くださいませ。 https://www.youtube.com/watch?v=Jp9esZCzy4g  2021/05/23

to boy

16
主に19世紀欧米の思想界を記述。ナポレオン戦争後の欧州、独立後の米国で生まれた新しい哲学。ダーウィンの進化論や数学の群論などに影響されながら理性、自由、道徳などの議論が進みます。資本論、功利主義、などよく聞く名前が出てくるけれど奥が深くて全部を理解できなかった。プラグマティズムは簡潔な説明で分かりやすかった。明治維新を迎えた日本の記述をもう少し詳しくして欲しい所。2021/12/14

masabi

13
【概要】19世紀を中心に各地での哲学の動向を描く。【感想】西洋哲学の批判者としてショーペンハウアー・ニーチェやプラグマティズム、マルクスが登場する。近代化に対抗する論理としてインドや日本の事例が引かれる。意外だったのは哲学と数学の関係で、哲学の進展と数学・論理学の発展が結びついてたというものだ。神は死んだの件。世界の善性、救済の可能性を保障する存在がなくなり、そもそも世界は善いものかという問いから出発することになった。2024/02/02

さえきかずひこ

12
時代や場所を問わず人類の日々の営みのなかに普遍や超越を探究する"世界哲学"を見いだせると構想し続刊するシリーズの第7巻。19世紀の"世界哲学"を扱っているが、巻末に置かれた苅部直さんの日本と近代を論じた第10章が興味深い。"文明"という概念を福澤諭吉、蘇峰、漱石らから辿り、仏国の影響が濃かった"文明"概念と独国の文化に対置される"文明"概念を突き合わせ、"近代の超克"論争を経て『書経』や『易経』における文明と開化の語義に迄さかのぼり、これらの語の帯びた倫理的色彩を鮮やかに描き出す端整な筆致が心地良かった。2020/10/13

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