ちくま新書<br> 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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ちくま新書
世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

  • ISBN:9784480072962

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内容説明

西洋における啓蒙主義は、基本的に科学的合理性への信頼を下敷きにしていたものの、同時に、理性に対する過度の信頼によって生じる人間性の軽視を問題視していた。啓蒙の光と影、理性と感情の問題を明らかにしつつ、「光」としての啓蒙運動が、人間性の復活という目標をもっていたこと、そしてそれがアメリカ、さらに東洋へと伝わって感情論を軸にした人間論に強い共鳴現象を起こしたことを、主に一八世紀を舞台とする東西の思想の具体例とその交流の歴史から浮き彫りにする。

目次

はじめに 伊藤邦武
第1章 啓蒙の光と影 伊藤邦武
1 はじめに
啓蒙とは
西洋近代の啓蒙主義
理性は人間の自然なのか
自然の光
2 啓蒙における理性と感情
イギリスとフランスの啓蒙主義
コンドルセ
ルソー
憐憫と良心
3 理性の闇
ルソーとヒューム
デカルトの懐疑
ヒュームの懐疑
4 人間感情論の射程
理性は情念の奴隷である
アメリカの人間感情論
東洋の人間感情論
第2章 道徳感情論 柘植尚則
1 道徳感情論の形成
感情主義
ハチスンの道徳感覚論
2 道徳感情論の展開──ヒューム
理性と情念
道徳的区別
共感
一般的観点
3 道徳感情論の完成──スミス
共感
公平な観察者
良心
道徳感情の腐敗
4 道徳感情論の可能性
道徳感情論に対する批判
道徳感情論の現代的意義
第3章 社会契約というロジック 西村正秀
1 一七~一八世紀のヨーロッパにおける社会契約論
主権国家の進展と社会契約論
社会契約論の基本構造と基本的道具立て
2 ホッブズとスピノザ
ホッブズの社会契約論
スピノザの社会契約論
3 ロックとルソー
ロックにおける自然状態
自然権と所有権
社会契約と主権者への制約
ルソーにおける自然状態
自由・社会契約・一般意志
キリスト教への態度と理性へのまなざし
第4章 啓蒙から革命へ 王寺賢太
1 はじめに──「世界哲学史」のなかの啓蒙と革命
「大西洋革命」か、「政治的自律」か
2 モンテスキューの専制批判
「法の精神」と「一般精神」の相関関係
3 新たな政治的正統性の模索
ルソー──「人民主権」という撞着語法
ケネー──「合法的専制」という逆説
ディドロ──「文明化」とその限界
4 革命と政治的自律の実現の困難
一八世紀末の政治的激動の渦中から
コンドルセ──「代表制民主政」と「人類の無限の完成可能性」
ロベスピエール──「恐怖政治」の論理と「最高存在の祭典」
5 おわりに
「政治的自律」──残された問い
第5章 啓蒙と宗教 山口雅広
1 ニュートンの自然神学
啓蒙思想とニュートンの自然哲学
ニュートンと自然神学
理神論との近さと遠さ
2 ニュートンとライプニッツ
自然神学と啓蒙思想
ニュートンの主意主義的神理解
ライプニッツの主知主義的神理解
3 ヒュームとカント
課題としての自然神学
ヒュームによる自然神学批判
カントによる自然神学批判
第6章 植民地独立思想 西川秀和
1 一八世紀アメリカにおける啓蒙主義の受容
先進的な独立宣言は後進地域で生まれた
アメリカの知識人たちとヨーロッパの啓蒙主義
2 フランクリンの実用主義
一三の徳目
社会改革
ヴォルテールとフランクリンの抱擁
3 ジェファーソンの自由主義
理性と信仰
道徳と心情
人民の啓蒙
4 植民地独立思想の遺産
フランス革命への継承
大西洋革命の危機
第7章 批判哲学の企て 長田蔵人
1 批判哲学とは何か
批判哲学と啓蒙
「啓蒙とは何か」
2 『純粋理性批判』の問い
理性の自己批判という企て
『純粋理性批判』のプログラム
存在と知の普遍的相即
3 『実践理性批判』の問い
「純粋実践理性」の道徳性
感情か理性か
道徳性と自己批判の能力
4 啓蒙と理性主義
感覚か理性か
批判哲学の世界哲学史的な意義
第8章 イスラームの啓蒙思想 岡崎弘樹
1 「時代の精神」の中の啓蒙思想
ルナンとアフガーニーの対話から
さまざまな留意点
2 「他者」を鑑として「自己」を知る
「置き換え」と「共有感」
「置き換え」の限界
3 ナフダ第二世代における実践的な応答
新たな政治状況と「公共圏」の確立
ムハンマド・アブドゥにおける「啓示と理性の調和」
4 第三世代における啓蒙派とその継承者たち
啓蒙派と伝統回帰派との分裂
再解釈されるイスラームの「啓蒙」思想
第9章 中国における感情の哲学 石井 剛
1 「中国のルネサンス」
「情動論的転回」の時代に
惻隠の心
中国における「感情の哲学」の誕生
2 性と情をめぐる中国哲学の議論
朱熹から王陽明まで
「情」とは何か
「自然」から「必然」へ
3 日常の中で学ぶこと
礼の作用
とっさの判断を誤らないために
第10章 江戸時代の「情」の思想 高山大毅
1 「情」の解放?
2 儒学の「情」論
朱子学における「情」論
「人情」理解論──仁斎学と徂徠学
3 「物のあはれを知る」説と「粋」「通」
本居宣長の「物のあはれを知る」説
「粋」と「通」
4 「人情」理解論と「振気」論
【コラム1】近代の懐疑論 久米 暁
【コラム2】時空をめぐる論争 松田 毅
【コラム3】唯物論と観念論 戸田剛文
【コラム4】世界市民という思想 三谷尚澄
【コラム5】フリーメイソン 橋爪大三郎
あとがき 伊藤邦武
編・執筆者紹介
年表
人名索引

感想・レビュー

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壱萬弐仟縁冊

31
啓蒙とは蒙を啓(ひら)くこと。俗論の誤りを正すという意味で2Cから使われ、日本では15C頃の文献に現れるという(015頁)。つまり、別のところで解明されてもいるが、啓蒙とは、人間が自ら招いた未成年状態(他者の指導不可欠)から脱け出すことである(185頁)。人間には良心という正義と美徳についての生得的な原理が備わっている。知るのは感情(028頁)。道徳感情とは、道徳的な是認、否認、称賛、非難の感情(048頁)。2021/05/23

さえきかずひこ

11
時代や場所を超えて真理や普遍を探究する営みを"世界哲学"と捉え論考していくシリーズの第6巻。18世紀を中心に論じられるが、第10章で高山が述べるように「「世界哲学史」という試みは西洋中心の見方からの脱却の途上にある」(P.259)。そんな中で本書のカント哲学→イスラーム啓蒙思想→中国の儒教哲学→江戸期の情の思想(第7〜10章)と西から東へと論題が遷移していく過程がとても面白かった。理性による啓蒙と感情にもとづく行動規範の指し示す先はひとがいかに善く生きるかという倫理の問題であり本シリーズの究極的な主題だ。2020/12/26

記憶喪失した男

9
哲学としてよく扱われる十八世紀周辺の時代を扱っているので、よくある解説になってしまうのではないかと思っていたが、従来とはちがうさまざまな切り口でこの時代の哲学を扱っている。とても興味深かった。期待していたような内容だった。2020/08/03

鵐窟庵

9
第六巻。シリーズのクライマックスとして、啓蒙と革命を書いている。ヒュームの懐疑論やアメリカのプラグマティズムが引き合いに出され、理性一辺倒の時代から理性を反省する時代になった。同時に、ニュートンとライプニッツの主意主義と主知主義といった対立が、哲学の永遠のテーマである実在論vs観念論を再演してみせるようであり、両者が先に優先権を争った微分法積分法が二人の表記法が異なる(x‘,x“かdx/dfか)という点に両者の思考法の違いが現れている。(例えば工学vs理学など)全体的に議論が大変な分より時間がかかった。2020/07/10

HaruNuevo

7
理性と感情という切り口で西洋の啓蒙思想を論じつつ、近い時代のイスラム、中国、そして江戸期の日本の思想が持っていた類似点と相違点を詳かにしていく第6巻。 相変わらず初学者にはストレッチが必要な内容ではあるけれど、この巻は、理性と感情という焦点がはっきりしていたので、読みながら地域に横串を刺しやすかったかな。2020/10/18

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