内容説明
北関東の小さな町で、珈琲豆と和食器の店「小蔵屋」を営む、お草さん。
彼女の日常にふと顔をのぞかせる闇が読者をグイグイ引き込む大人気シリーズ第6弾。
秋のある日、草に旧友の初之輔から小包が届く。中身は彼の書いた短い小説に、絵を添えたものだった。
これをきっかけに、初之輔と再会した草は、彼の苦しかった人生を元気づけるために、彼の短編を活版印刷による小本に仕立て贈ることにした。
この小本の印刷を依頼した小さな印刷会社の個人データ流出事件に草は巻き込まれる。
草の働きによって、印刷会社周辺の人々の記憶までもが明るく塗りかえられてゆく。
「一つほぐれると、また一つほぐれてゆくものよ」
逃した機会、すれ違い、あきらめた思い――長い人生、うまくいくほうがまれだったけど、丁寧に暮らすのが大切。
お草さんの想いと行動が心に染みる珠玉の一冊。
※この電子書籍は2018年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
42
2018年2月文藝春秋刊。書き下ろし。シリーズ6作目。2019年6月文春文庫化。データ流出事件や自殺で片付けられていたことに関わる草。真相に迫る過程に気をもみましたが、話の展開の中での草と登場人物たちのはからいにホッと胸をなでおろすことしきりでした。読み応えのあるお話です。2020/12/24
ミツツ
37
実は私、生卵が苦手で、すき焼きはそのまま食べる。しょっぱい、美味しいけどしょっぱいのだ。ところがなんと、お草さんは長芋につけるというので絶対やってみたいと思った。すき焼き日に長芋買うの忘れないようにしないと♪ 今回は久美ちゃんの恋路とお草さんの元ダンの話しが見どころです。 2021/05/13
さくらさくら
29
『お草さん』シリーズ第6巻。安定の面白さ。年を重ねた分だけ色々ある。2019/06/19
まるぷー
27
お草さんのもとに若い頃芸術活動をしていた旧友から絵巻物が届く。懐かしむ余り旧友が書き上げた短編小説を自費出版するため萬來印刷に依頼するが、大手印刷会社の個人情報流失に巻き込まれるなど一騒動が起きる。また、小蔵屋の従業員の久実さんと萬來印刷の社長との微妙な関係にも気を揉むお草さん。そして、ある女性の死についても調べ悲しくも切ない真相に辿り着く。いろんな出来事や廻りの人々と関わりを持ちながら気丈夫で暮らすお草さんが頼もしい。友人の由紀乃さんの存在も心の支えになっている。活字を一つ一つ拾う活版印刷を改めて知る。2022/02/13
agtk
25
シリーズ6冊目。ここのところ少し読むのが辛くなってきたところがあったが、今回は読んでよかった。年月の重ね方を考えさせられる。由紀乃さんが元気そうでなにより。最後の元夫の手紙のエピソードはよかった。続編でもう少し明らかになってくるのかな。新刊も出たようだし楽しみ。2019/06/23