内容説明
歴史には時代の流れを決定づけたターニングポイントがあり、それが起こった原因を探っていくことで「日本が来た道」が見えてくる。満州事変から敗戦までの十五年、政府と軍部が繰り返した“誤算”とは。戦局拡大の要因を、マリアナ沖海戦・サイパン陥落(1944年)→日米開戦(1941年)→日中戦争(1937年)→熱河侵攻(1933年)の指導者たちの姿に見る。
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感想・レビュー
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kawa
30
敗戦から日米開戦、日中戦争、満州事変と歴史をさかのぼって追う試み。それが成功しているかはわからないけれど、日中戦争や満州事変のあたりはページ数の割りに、対立勢力の細かい動きなど結構知らなかった事項が明らかになったりで歴史理解に役立ってラッキー。掲載の関係地図も親切・適切でありがたい。太平洋戦開戦を主導した軍中枢部(四〇代)世代は、子供のころ日露戦争の勝利に熱狂し、「戦争というものをある種のエンタテイメントとして体験していた」世代との分析もなるほどと感心。2022/09/07
田園の風
14
敗戦から満州事変までの時代のターニングポイントを遡る。マリアナ諸島は日米の最重要地点であった。なぜならこの地はB29が日本本土を空襲し帰還できる距離内にあったからだ。日本は米国の最新鋭兵器の前に屈し、マリアナ諸島失陥以降、この戦争の民間人戦没者80万人の内50万人を失うこととなった。原爆投下も同諸島のテニアン島からである。そもそも日米はなぜ開戦に至ったか。米国は中国に巨大な経済的権益を持っており、日中戦争は日本が東アジア支配を企図するものとして見ていたからである。(続く)2019/03/14
RingWondeRing
10
“(前略)移民しようとしている家の妻であったらどう行動したか 、関東軍の若い将校であったとしたらどう行動したか 、そのような目で歴史を振り返って見ると 、また別の歴史の姿が見えてくると思います 。近代史をはるか昔に起きた古代のことのように見る感性 、すなわち 、自国と外国 、味方と敵といった 、切れば血の出る関係としてではなく 、あえて現在の自分とは遠い時代のような関係として見る感性 、これは 、未来に生きるための指針を歴史から得ようと考える際には必須の知性であると考えています 。”2019/10/30
クサバナリスト
10
本書が『とめられなかった戦争』のタイトルで文庫化されたことに伴い読んだ。NHKの番組は観ていたが、当時は著者のことは知らなかったが、その後、著作を幾つか読んだ。本著もとても分かりやすかった。2017/05/10
加藤久和
8
普通の歴史書とは異なり時間を逆回転させ、歴史的事件の原因をさかのぼって究明するユニークな本。満州事件発生から1944年の「南洋群島」での日本軍の敗走までをカバーしている。著者が強く強調する1944年7月の「サイパン失陥」の重大な意味を私達日本人はよく知っておく必要があると思う。サイパン失陥の意味とは「絶対国防圏の崩壊」であり、それによって「本土空襲」が日程に上がったことが決定的な重大事であった。原爆の投下もその流れの中に位置づけられるだろう。少なくとも1年早く戦争を終わらせるべきだったのだ。2015/05/21