内容説明
京都発! 思い出の「味」、捜します。
第一話 鍋焼きうどん―― 一番おいしかったものにもう一度出会うのは難しい。
窪山秀治は数年前に妻を亡くし、定年後に新たな伴侶と巡り会った。彼女は秀治の大好物だけうまく作れないという。
第二話 ビーフシチュー――プロポーズされたレストランが思い出せない!?
師走に入ると、京の都もせわしない。二人の老婦人が、55年の食を求めて看板もない食堂に入っていった。
第三話 鯖寿司――おいしさに勝るのは、思い出というスパイス。
総理大臣である岩倉友海が探しているのは、50年も前食べさせてもらったおやつがわりの品だった。
第四話 とんかつ――“おいしい”の一言を、忘れる料理人はいない。
大分でピアノ教師をしている広瀬須也子の元夫は、京都でとんかつ屋を開いていたが、余命三ヶ月だという。
第五話 ナポリタン――おいしいものを食べると、泣けてくる。
浜松に住む女子大生・美月明日香が探しているのは、祖父が旅行先で食べさせてくれた黄色いスパゲティだった。
第六話 肉じゃが――男のソウルフードは、おふくろの味。
六本木ヒルズ在住の実業家・伊達久彦は、亡き母が作ってくれた肉じゃがを食べてみたいという。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
493
なかよしの読み友さんよりシリーズで譲っていただいた。先日訪れたばかりの京の街を、主人公たちと散策しているような気持ちに。京都(とその料理)を知り尽くした著者ならではの表現に、思わずこちらも舌を鳴らしてしまう。食とミステリーを絡める手法は近年流行っていてわたしの大好物でもあるが、これは手垢感もなく楽しめた。ラストの「肉じゃが」思わず(わたしには珍しく)涙が薄らにじんだ。あと4巻手元にあるので、一気にいきたい。2023/07/29
射手座の天使あきちゃん
261
【「食」探します】料理雑誌に掲載された一行広告を頼りに辿り着いた依頼人の思い出の味の謎を解き明かす短編集です とりどりのお料理、ゆるーい登場人物と猫、そしてベタベタの京言葉、もう絶品の味わいです!(笑) それにしても、ちょっと、ちょっと流さん謎解き超人過ぎませんか? <(^_^;2016/02/20
ちょこまーぶる
222
読後はホッコリ優しい気持ちになれる一冊でした。食べ物の思い出からその食べ物を再現してもやもやした気持ちを整理させる探偵?の話なんですが、多くの人は人生の様々な出来事ともに思い出の食べ物というものがあるような気がしますね。という事で、非常に面白い設定のお話だなぁ~と思いましたね。また、章ごとに鴨川食堂へ訪れるお客に対するお任せ定食の内容が、本当に食欲がそそる内容で食いしん坊の読者は堪らないのではないでしょうか。そして、自分にとって再度味わいたい食べ物って何かなぁ~と考えながら読んでましたね。お腹空きますよ。2016/06/24
カメ吉
148
6話からなる短編集でとても読み易かった。しかもどの話もほのぼのとした思い出深い料理を探す謎解きミステリーでした。 大きな感動はないけど良質な連ドラを観てるような感じで楽しめました。料理が絡む作品はやっぱり楽しいです。2016/10/26
ぶち
134
"ちいさい頃に夢中になった本。もう一度読みたい。でも、題名も作者も覚えていない” あやふやな記憶でも本を探し出してくれる"本の探偵"、赤木かん子さん。若い頃の憧れの人でした。この『鴨川食堂』は、そんな本の探偵の料理版。もう一度食べたい。こいしい食べ物を探す"食の探偵事務所"の物語です。食べ物は本に似て、様々な思い出と伴にあるものだと、あらためて思います。料理を口にしたとき、眠っていた思い出が胸によみがえってきます。卵を溶きほぐす菜箸の音を聞いただけで、作ってくれた人のことが思い出され、胸が熱くなります。2020/05/12