内容説明
『朝鮮水軍統制使李舜臣の「破倭兵状」、すなわち日本軍を破った戦闘報告書の一つである』――悪名高き秀吉の朝鮮出兵。正体不明、無敗の朝鮮軍の大将「沙也可」と日本の忍者「狐」が手を結び狙うは太閤の命、ただ一つ……。史実と忍法が見事に融合した表題作を含む快作七篇。
感想・レビュー
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けやき
43
忍法帖短編集。「忍法相伝64」以外の作品は全て既読済み。秀吉の朝鮮出兵を描いた表題作の「忍法破倭兵状」が1番よかった。2023/02/17
星落秋風五丈原
24
忍法というのは基本的に相手を倒すためのもの。しかし徳川の世が定まってくるとそうそう争いは起こらない。そこで忍者が命じられるのは大奥に忍び込んで中臈を妊娠させる任務だったり、(「忍法肉太鼓」)女性恐怖症に陥った藩主に、何とか世嗣ぎを生ませる事(「忍法花盗人」)だったり。セックス・カウンセラーか医者である。だから、長崎で蘭学を修めただけの忍法のにの字も知らない山鳥竹斎でも隠密として目をつけられる。しかし彼は冒頭で、いきなり「私はインテリ忍者である」と言い「いわゆる忍法なるものを、むしろ嫌悪している」と続ける。2004/12/05
ヨーイチ
17
ラッキー。7編収録で全部初読。短編の場合、術が題名になっている作品が多い。術、命名、ストーリーの順で書かれた短編って結構多いのではないか。。最初の「鞘飛脚」はその典型だろう。「鞘」の字を読み飛ばして本文に入ったお陰で「オチ」が分からずしばらく???状態が続いてやっと納得なんてことも。忍法「しだれ桜」なんてきれいだよなぁ。勿論、実態はエロいし、爆笑物。やはり表題作が一番面白い。秀吉の朝鮮侵攻を背景にした朝鮮側の反抗。それにしても「沙也加」ってのは何者?多分資料には出てくるのだろう。付録で「忍法相伝64」2015/06/02
getsuki
5
いつもながらエグいなぁ・・・あまり救われる結末じゃないのが山風らしさというべきか。忍法鞘飛脚は乱歩先生のオマージュですねわかります。2011/04/14
美代子
4
面白いなあ!初の山田風太郎だけど、なぜ初めてでこれを取ったかというと冒頭の「私はインテリ忍者である」に惹かれてしまったからだ。だから「忍者鞘飛脚」はギャグかと思えば、陰鬱な話で竹斎の遺した獲物の執念や人豚の艶かしさが…。「肉太鼓」は十蔵が部屋を行き来する描写が本当に面白い。「花盗人」は酷い話だなと、忍に幸せはないのか!「忍法相伝64」はドラマ化したら面白いだろうなあ。表題作はまさに狐につままれたよう。2014/02/12