内容説明
遂に奥平純明が襲撃された。唐木市兵衛は賊が安宅猪史郎ら元千人同心で、純明のえぞ地政策の盟友だった商人・竹村屋雁右衛門がその協力者と知る。
雁右衛門は純明の側室・お露の前夫で、裏切られ、妻を奪われたとして恨み骨髄に徹していた。
やがて純明とお露が秘す哀しき真相を知った市兵衛は、己が一分を果たす覚悟を新たにするが……。
明日を求めぬ復讐劇に待つ終幕とは?
大人気「風の市兵衛」、シリーズ屈指の大作(上・下2巻)完結編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤枝梅安
82
侍は誇りを大事にする。町人とて誇りはあれど、隠して商いをする。侍が商いを始めるとき、誇りを隠すことを学ばねばならぬ。安宅と雁右衛門は最後のところで、「誇り」に隔てられてしまったのだろうか。「天下の約束も渡りの約束も同じ約束だ。どちらが大事か、それは戦う者が決める。」市兵衛のこの言葉は安宅の理解を超えたものだったのだろう。安宅も市兵衛も所詮は武士として、嫡男ではない立場として、上からの命に従うことしかできないのだ。封建社会の仕組みを現代人も感じる場面がある。時代小説を読むのはその意味を確かめるためでもある。2017/02/20
紫 綺
47
蝦夷の地を起源とする哀しい哀しい物語、厳寒の風と供にここに帰結。2024/03/25
はにこ
40
八王子千人同心達の純明暗殺計画は続く。20年経っても恨みを持ち続けるのもきっとそれが生きる支えになっていたからだろう。お爺ちゃん侍がのんびりしていて良いアクセントになっていたな。大仕事を終えて、皆でまた飲めて良かったね。確かにこんなんばっかじゃ武家仕事は嫌になるわな。2020/09/24
めぐ
39
八王子千人同心の無念さが際立つ物語だった。青い目の大奥様が長男を身篭った頃の心情が知りたかったけれど、大奥様はあくまでも奥ゆかしく身を引いている立場だから、正しいところは明らかにはならなかった。たぶん、我が子を守りたかったのだろうなぁ。物語ではそこまで書いてはいなかったけれど、若君と姫さまたちの運命も変わってしまったなぁと思った。2020/02/20
ひさか
27
2013年6月祥伝社文庫刊。シリーズ10作目。上下巻合わせての長編は、重く悲しいお話で、少し疲れました。市兵衛のありようが救いです。2018/06/18