ちくま新書<br> 昭和史講義【戦後文化篇】(下)

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ちくま新書
昭和史講義【戦後文化篇】(下)

  • 著者名:筒井清忠【著者】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 筑摩書房(2022/07発売)
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  • ISBN:9784480074973

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内容説明

戦後の昭和は、世界的にも評価され黄金期を迎えた日本映画界を中心に、映像による多彩な大衆文化・サブカルチャーが花開いた時代だった。『昭和史講義』シリーズの最終配本となるこの戦後文化篇の下巻では、さまざまなジャンルの映画作品とそれをつくった監督たち、テレビドラマからアニメ、雑誌に至るまで、百花繚乱のメディア文化を、19の論点から第一線の研究者がわかりやすく解説する。『昭和史講義』シリーズを締めくくる完結篇にして、昭和文化史研究の総決算となる一冊。

目次

はじめに……筒井清忠
戦後文化における映画の重要性
松竹・東宝・新東宝
大映・日活・東映
多様な大衆文化の展開
第1講 戦後の木下惠介と戦争……花田史彦
野原しんのすけと木下惠介
兵士・木下惠介
戦後のなかの戦争(1)──『二十四の瞳』
戦後のなかの戦争(2)──『今日もまたかくてありなん』
中国と長崎
悔恨共同体を賦活する
第2講 『君の名は』と松竹メロドラマ……北浦寛之
『君の名は』ブーム
ラジオドラマの映画化
松竹とメロドラマ
女性向けの宣伝
『君の名は』のメディア展開
テレビ放映
『君の名は』以後の松竹メロドラマ
第3講 成瀬巳喜男──映画の面影……川本三郎
「小市民映画」という新たな息吹
遅れた監督昇進
P.C.L.への移籍と庶民への着目
戦意昂揚から離れて
戦後の映画界の試行錯誤の中で
女性映画と「普通」の女優の誕生
玄人の女性の生活を描く
戦争未亡人へのまなざし
林芙美子への共感
第4講 ゴジラ映画……谷川建司
核実験が産み落としたもの
ゴジラの皮膚の質感
放射能による生態系への影響の恐怖
メッセージ性を失ったゴジラ
輸出向けコンテンツとしての怪獣もの
第5講 サラリーマンと若大将──東宝シリーズ映画……西村大志
直木賞映画?
社長シリーズと若大将シリーズ
プロデューサー藤本真澄、松竹作品を明るく焼き直す
マンネリの効用
繰り返しと伝統芸能
東宝シリーズ映画の終焉
第6講 新東宝の大衆性・右翼性・未来性……片山杜秀
山口二矢と「セヴンティーン」
「エログロ三本立週間」
新東宝の最初の八年
大蔵イズム
『明治天皇と日露大戦争』
政治少年は死すとも新東宝は死なず
第7講 『叛乱』──日本における政治歴史映画の特質……筒井清忠
小説の映画化に向けて
青年将校の思想を肯定
空前の大作として大ヒット
俳優陣と映画のポイント
史実としての安藤の苦悩
史実との違いと処刑シーン
第8講 三隅研次と大映時代劇……吉田広明
三隅研次の位置
大映という映画会社とスタジオシステム
海外での評価
二人のケンジ
三隅の映画作法
プログラム・ピクチャーを見る意味
第9講 日活青春映画──「御三家」と吉永小百合……藤井淑禎
日活青春映画の出発
映画の危機
歌謡映画の季節
歌謡映画と過渡的時代
歌謡映画のテーマ
国民的女優・吉永小百合
歌謡映画からテレビドラマへ
第10講 東映時代劇……筒井清忠
内田吐夢監督の『大菩薩峠』三部作
仏教的因果応報観
伊藤大輔の〝襖による出消技法〟
マキノ雅弘と田坂具隆
その他の監督たち
『椿三十郎』と残酷時代劇
東映時代劇映画の特徴
第11講 任 映画興亡史──暗闇における殺戮のカタルシス……二階堂卓也
映画館の片隅で
それは『飛車角』から始まった
日活が追随する
東映・日活・大映の三つ巴
快進撃が続く東映
東映の独走と他社の脱落
衰退から消滅へ
第12講 「幕末維新」映画──大衆イメージに見る明治維新……筒井清忠
時代劇映画における「幕末維新もの」の確立
戦前の倒幕派映画
戦後の倒幕派映画
架空のヒーロー
佐幕派映画
幕末維新映画の意味
第13講 菊田一夫──歯を喰いしばる人生……神山 彰
人生という「芸道物」
ラジオの時代──占領下の記憶
戦後映画の黄金時代
テレビに向かない作家
共有記憶としての演劇
宝塚とミュージカル
第14講 少年少女ヒーローとヒロイン──『赤胴鈴之助』から『リボンの騎士』まで……樋口尚文
『赤胴鈴之助』の戦前の原点
「チャンバラ禁止」時代を抜けた解放感
「テレビ映画」の草分け『月光仮面』
『少年 楽部』とのダイレクトな接合
『隠密剣士』から『水戸黄門』へ
アメリカ文化の流入と『リボンの騎士』
第15講 東映動画とスタジオジブリ……萩原由加里
東映動画、そしてスタジオジブリへ
東映動画前史
東映動画の設立と「東洋のディズニー」
商業デビュー『白蛇伝』とスタッフたち
TVアニメの時代へ
『アルプスの少女ハイジ』と日本アニメーション
スタジオジブリの設立
第16講 長谷川町子、手塚治虫と戦後の漫画観……夏目房之介
長谷川町子と手塚治虫
手塚、長谷川の共通点
現在からは見えにくい排除
漫画の主流としての「漫画集団」
漫画概念と支持集団の闘争
第17講 『平凡』と大衆文化……阪本博志
『平凡』の沿革
『平凡』を軸とした大衆文化の展開
『平凡』を介した若者たちの活動──文通と「平凡友の会」
『平凡』をめぐる文化の特色
第18講 朝ドラ──主婦層を支えたビルドゥングスロマン……竹内里欧
「朝ドラ」パラダイム成立以前
「朝ドラ」パラダイム成立以後──「女性の成長物語」路線の定着
『おはなはん』──「平凡な女性」の物語
『雲のじゅうたん』──職業への夢をとおして生きる女性
『はね駒』──職業と家庭のはざまで悩む女性
女性の「成長物語」とビルドゥングスロマン
朝ドラと「本来の」ビルドゥングスロマンとの相似
第19講 被曝者・伊福部昭と水爆大怪獣・ゴジラ……片山杜秀
日曜作曲家
被曝する兄弟
幻のヴァイオリン協奏曲
被曝者は被爆者に共感する
ドシラと下がってシで止まる
大楽必易
編・執筆者紹介

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

Inzaghico (Etsuko Oshita)

10
川本三郎が書いた成瀬巳喜男の章は、ほかの著者と比べると読みやすいと思うのは贔屓の引き倒しか。成瀬が戦意高揚の映画を撮らなかったこと、成瀬の撮影は9時5時で終わったこと、そのあと飲み会などしなかったことなど、成瀬の人柄がよくわかる。だからあのような映画が撮れたのだなとも。菊田一夫は劇作家として名を成したが、テレビでなぜ活躍できなかったのか、という説明も面白い。本人が家族団らんを知らなかったから、テレビ揺籃期の家族団らんものが書けなかったという見立てに、親がいない子どもが珍しくなかった時代を思う。 2022/11/28

田中峰和

6
日本映画は戦後、どのように発展・変化してきたのか。第9講「日活青春映画」は映画界の斜陽化に日活がどのように対応したのかがわかる。石原裕次郎、小林旭、高橋英樹、吉永小百合の4人を軸とするスターシステムも飽きられ次の手を打つ必要があった。舟木一夫や西郷輝彦を軸とる歌謡映画路線が始まる。テーマは観客層に合わせ、若者への応援歌、励ましが求められる。まさに「いつでも夢を」はその代表といえる。第10講「東映時代劇」は華麗な殺陣を魅せる映画が飽きられ、黒澤明監督のリアリティが評価され、残酷時代劇が増加していったのだ。2025/05/04

あるまじろの小路

0
昭和史講義シリーズの最後は戦後の映画を中心に論じられます。今では映画は完全に「数ある娯楽の中の一つ」でしかありませんが、当時は娯楽の王様であったことがよくわかります。大衆娯楽という形を借りて、敗戦を受け入れざるを得なかった国民の、おおっぴらに口に出しては言えない屈折を表象・代弁し、大きな支持を得ます。テレビの普及に伴って映画産業は斜陽の道をたどりますが、歌謡映画という新たなジャンルを開発し、逆に制作費が限られているがゆえに身近な青少年の悩みを取り上げて時代の青写真となっているのは実に興味深いですね。 2023/05/09

辻井凌|つじー

0
映画を中心にビジュアルおよび音声メディアに焦点をあてた本。僕はあまり映画を見ないこともありよくわからん箇所も多いが、昔の映画好きにはたまらん内容かも。個人的には森繁久彌の演技とマンネリにまつわる名言にしびれた。2023/02/28

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