内容説明
多くの鉱山を開拓し、家康さえも一目置いた稀代の傑物・大久保石見守長安。彼に立ち向かい護衛の伊賀忍者たちと激戦を繰り広げる不敵な無頼者「六文銭の鉄」の活躍を描く、爽快感溢れる忍法帖!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
315
買ったまま読んでいなかった忍法帖。六文銭の鉄を快男児と思えるかは現代の感覚では微妙なところで、むしろ嫌悪感抱く読者の方が多い気がするが、あまりにも弱すぎるのに大物ぶっている伊賀忍者が気の毒で、しかも無駄に個々の背景をしっかり紹介してくるものだからだんだん楽しくなってきてしまう。冒頭でいきなり長安の妾に完敗してるのは、あまりにもひどい扱い。修行による技術の習得に継続性がないという、長安の口を借りた風太郎の考え方はかなり先進的ではないか。散々馬鹿やった後のしんみりする結末も山風作品でしか味わえない良さ。2024/12/11
けやき
50
【再読】自分のランキングでは、山風の忍法帖でもベスト5に入ると思える傑作。大久保石見守長安に六文銭の鉄と朱鷺が挑む。六文銭の鉄の正体とその明かされ方が好き。鉄と朱鷺は純愛だったんだなぁ。2023/06/22
サケ太
24
破格の面白さ。六文銭のあだ名を持つ、鉄はある女六部と出逢う。それが、佐渡において未来的な思想を持つ大久保長安と科学兵器を持つ五人の妾たち、それぞれが名人芸を持つ五人の忍者たちとの戦いの始まりとなる。この、鉄という人物が非常に魅力的。女のために忍者も倒すが、自分の欲望も果たす。その人柄が面白い。この男の起こす騒動にハラハラさせられながらも、虚しさを感じさせる終幕がまさしく山田風太郎作品。2021/11/24
河内 タッキー
15
1980年か90年代に買った記録はあるが、読んだ記憶はない。全く読む気もなかった思い出だが、再版されて今回読んでみると面白い。非常に充実している。終盤の息詰まる駆け引きと、二転三転するストーリー展開。ただの忍法小説にとどまらない、ミステリー作家としての本領発揮。タイトルの意味も数十年越しにわかってちょっと感動。外道忍法帖の結末を彷彿とさせる。2022/01/04
ペペロニ
11
六文銭の鉄が惚れた女の願いの為に、大久保長安を倒す旅へ出る。旅の終点は佐渡。佐渡の金山や赤玉城が舞台となって、六文銭は肉体と機転を武器に、伊賀忍や科学兵器を駆使する女たちと対決する。終盤明らかになる六文銭の正体とそのエンディングが意外で、ただの冒険活劇と思っていたら意外と余韻の残る終わり方で良かった。2023/04/17