内容説明
父が死んで、身よりを失った女子高生の茜と妹のすみれは、親戚筋の久我家に住まわせてもらうこととなった。久我家は京都東山の麓、岡崎の広い敷地に「月白邸」と呼ばれる大きな日本家屋を構えており、二人はそこで、家主で若き日本画家の精鋭・青藍と、彼の友人で陽だまりのように明るい絵具商の青年・陽時に出会う。月白邸に集う人々の、じんわり優しい心の再生物語。
目次
一 月光の月白邸
二 緋色の恋心
三 赤朽葉の夢の先
四 極彩色の金魚鉢
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
カメ吉
83
初読の作家さん。両親を亡くした姉妹と偏屈な天才絵師との共同生活と新たな家族と絆を築く物語。予想以上に良かった!姉妹を引き取った天才絵師の「青藍」の不器用で偏屈さに隠れた人間味が良かったし、しっかり者の姉・茜と幼く無邪気な妹・すみれの健気さも良かった。不安だらけの新たな同居生活の中で偏屈者で自堕落的な生活をしてた青藍が徐々に人間味を出していく様が良かった。もう一人の同居人の陽時も温かく姉妹を見守る様も心地良い。 不遇な事情を持つ4人の家族生活の未来は明るい予感です。実際、岡崎の辺りは立派な塀の家が多いしね。2020/12/09
真理そら
73
母の死後東京から父の故郷京都に戻り穏やかな生活をしていたのに父が死んでしまって高校生の茜と小学生のすみれはふたりぼっちになってしまう。引き取られた叔父の家は日本画の伝統ある家だった。ある日いきなり青藍という若い日本画家が姉妹を引き取ってくれることになった。京都&女子高生&無愛想な長身イケメンという道具立てのラノベなのに恋愛要素はなく茜とすみれの姉妹からサツキ・メイ姉妹を連想してしまった。青藍と陽時というイケメン二人と茜すみれ姉妹が月白邸で疑似家族を作っていく物語。自然の移ろいや日本画の描写が魅力的。2022/06/09
ぶんこ
47
京都の宮廷絵師の家系の人々の、家格に拘る窮屈な生活。それをよしとしない青藍や陽時とともに、遠い血縁の4人がお互いを思いやりながら暮らす日々の暖かさ。子どもに聞こえるように悪口を言う親族。読んでいて辛かった。青藍も同じような幼少期を過ごし、月白さんの養子となって救われた。困っている人を、大きな心で受け入れてきた月白さんの最期は、血縁はいなくとも多くの人に囲まれて豊かだったのが羨ましい。青藍が描いた桜の木の絵、根元には猫と犬、枝には2羽の雀。桜の木は青藍で、陽時、涼、茜、すみれですね。嬉しい涙が溢れました。2022/04/16
よっち
46
優しかった父が死んで身よりを失った女子高生の茜と妹のすみれ。親戚の家で肩身の狭い思いをしていた彼女たちを、親戚筋で京都岡崎にある「月白邸」に住む青年・青藍が引き取られる家族の物語。酒浸りの破綻した生活を送る人間嫌いで変人という噂の青藍と、入り浸る明るい絵具商の青年・陽時。最初ぎこちなかった関係も茜の餌付けやすみれのあどけなさに少しずつ変わっていって、陽時の特別な人のエピソードは切なかったですけど、家の事情に振り回され続けた彼らが、その不器用な関係に大切な絆を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。2020/10/16
悠
36
青藍さんの京言葉が好きです。 お話も好みでした。続編が出ているようなので 揃えようかと思っています。 茜と妹のすみれが父亡き後に受けた心の傷…そんな時顔も知らない親戚に引き取られることになりそこには、無愛想で獣の目をした心優しい青年が住んでいた。固く閉ざされていた姉妹のココロが開いていく様子はこちらまで心が温かくなったような気がしました。 続きがとても気になります2024/07/28
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